第95話 サウル、解放される。しかし絶対絶滅
異形化したサウルの足元に詠唱陣が描かれ、包み込むように全身に行き渡る。
ウウウウウッ…………。
異形化したサウルは痛みに耐えながらブルブルと全身を震わせる。両腕を広げ、緑色の血管をドクドクと脈動させ、さらに肥大化。同時に両爪をバキバキと成長、キラリと輝きを放つ。
赤黒い輝きを放つオーラ、そして聞こえる過去の記憶による声………。
───父さん、母さんッ!!
少年の前。黒塗りの影で塗られ、王国軍の兵士達に連行される両親の姿。
───あばよ、ガキンチョッ!!
広地にて………出血した腕を押さえ、裏切った仲間と包囲するゴロツキ達を睨む駆け出しのサウル。
壊す壊す壊す壊す壊す…………。
全てを………奪い、仇名す奴らに………。
ヲヲヲヲヲヲヲヲヲッ!!
異形化したサウルは、ぶっ飛んだ意識で跳び掛かる。過去の記憶により理性を煽られ、正気すら(魔の宝玉)の能力により、支配されてしまった………。
■■■■■■………。
無限のD(インフィニティD)のミリアは赤黒いオーラを漂わせ、黒剣を片手構えで駆ける。
そして………異形化したサウルの至近距離に踏み込み、全身に1発、2発、3発、4発、5発、6発………と斬撃を与え、同時に跳び下がる。
ヲヲヲヲヲヲ………。
異形化したサウルは6発の斬撃に苦悶のうめき声を響かせ、震え上がる………。
「シャッ!!」
一瞬の出来事、それは割って入るように………。
───次に中間の位置にて、無限のD(インフィニティD)のミリアは胸部に狙いを定め、黒剣をトドメの突撃を与える。そして引き抜き、再び跳び下がる………。
ヲヲヲヲヲヲ………ググ………。
異形化したサウルは苦悶の叫び声。全身に光を放ち、異形化状態は解けていくように縮小化。
(魔の宝玉)の赤黒い光はガラスが割れるような音を響かせて消え、出入り口の扉に発動している魔法障壁が解除される。
サウルは異形化から解放され、ボンヤリとした感覚になりつつ、意識を取り戻す。
「あれ………この………状況は?………」
サウルは辺りを眺め、今の状況を整理するが………感覚がボンヤリとしている為、理解が追いつかない状態。
殺せ………ニンゲンを………
憎しみ、悲しみ、怒りを我に………
無限のD(インフィニティD)のミリアの心にDの声が煽り、全身に赤黒いオーラを放つ。次に黒剣を片手で構え、狙いを定める。
「え、嘘だろ?」
サウルは一瞬の状況を理解。しかし、全身に稲妻のような激痛が行き渡り、動けない。
───そして………無限のD(インフィニティD)のミリアは黒剣を片手で構え、駆ける。




