第92話 Dの誘い
随分と窮地に陥っているようだな………
ミリア・ミア・シュバルツよ………
ミリアの心の中、奴の声が露骨に囁いて来た………。それは優しく手を差し伸べ、受け入れた者は魂を支配され、最後は悪魔に首輪を繋がれ、隷属となる。
「アナタの思い通りになんて………」
ミリアは冷や汗を流し、頑なに………。
しかしミリアの状況、それはまるで死刑執行寸前。異形化状態のサウル、赤黒いオーラを漂わせ、ランスを装備した漆黒の聖職者達が立ちはだかる。
良いのかい?我を解放しなければ、貴様はあの小僧に殺されて死ぬ事になるぞ?………。
我を解放すれば、あの小僧を助けてやらんこともない………。あの小僧はそこにある宝玉の光により、過去の記憶を呼び起こされ、それが力となって解放された状態だ………。
奴の声は嘲笑うように説明。
「サウルさんを助ける事が出来るのですね?」
ミリアは尋ねる。
あの小僧を助けられる、助けられないのは………貴様が我の力を使いこなせるかどうか次第だ………まずは我の力を解放せよ………。
Dの声は誘うように再びミリアに取引を持ち掛ける。
サウルを助ける為、仕方がない………。
ミリアはゴクリと息を飲み、Dの取引に、受けざるをえなかった………。対抗するには力が必要、ミリアは肚を括る。
「やるわ、アナタの力を解放してちょうだい」
ミリアは言った。
お望み通り、力を解放してやろう………。
────ッ!!
ミリアの全身に詠唱陣が描かれ、赤黒い輝きを放った炎の渦巻きが広がる。
Dはデッド………
Dはダークネス………
Dはデミス………
全ての終わりはD、無限のDを司る魔、その名は■■■■■■
Dの声は唱え、バチバチと雷流が行き渡り、そしてその姿を現すのである。
彼女はまだ熟していない為、我の名前を理解出来なかったのは残念だ………。
無限のD(インフィニティD)に変身したミリア。
金色のタテガミ、赤黒い角を生やした隻眼のマスク。両肩には赤黒い長殻のショルダーアーマー、腕部には赤黒いガントレット。胸部には赤黒いビキニアーマー、脚部には赤黒いフットアーマーを装備し、全身に赤黒いオーラを漂わせる。
(何て力………少しでも気を抜くと………)
無限のD(インフィニティD)状態のミリアは両掌を握り、軽く動かす。力が上昇し、心の中に赤黒い炎が燃え盛るような気持ちだ………。
足りぬ………もっと………もっとだ………。
人間共の魂を我に捧げよ………そうすれば我は復活するであろう。
ミリアの心の中にて、赤黒い炎にDの言葉。しかし聞き入ってはならない、聞き入ってしまえば人間として戻ってはこられない。
───無限のD(インフィニティD)のミリアは右手を掲げ、黒剣を出現させ、片手で構える。




