第90話 逃げられない状況
「どうしたら………」
サウルの状態、そして出現したモンスター達を前に緊張感を漂わせ、ミリアは額から汗を流しつつ、ショートソードを構える。
───サウルは………赤黒いオーラを漂わせ、鋭い眼光をギラリと輝かせる。サウルの前列には5体の漆黒の聖職者達が隊列し、ランスを構える。
台座の上には(魔の宝玉)が光り………そして出入り口の門は赤黒い詠唱陣が描かれた魔法障壁が発生し、逃げられない。
ミリア・ミア・シュバルツ………
Dに愛される汝、我を理解し、力を覚醒せよ………
「アナタは出てきてはダメッ!!」
ミリアは頭を抱え、苦悶の様子で震える。
頭の中に流れてくる自分に宿るDの声、自身の左腕には侵食するように赤黒い紋章が描かれる。本能的に拒否するのは、Dを理解してはいけないからだ。
───ヲヲヲヲヲヲヲヲヲッ!!
サウルは暴走。赤黒いオーラを発生させ、異常な咆哮。同時に配下の漆黒の聖職者達がランスを構え、攻撃開始。
「水波ッ!!」
ミリアは片手でショートソードを掲げ、詠唱。
水球を放ち、小規模の波を発生させる。水の波は漆黒の聖職者達を巻き込む。ダメージは皆無、奴らの位置には水溜まりが行き渡る。
かの者に氷結の裁きを与えよ………
さらに、波により後退る漆黒の聖職者に対し、ミリアは地面に詠唱陣を描き、スラスラと詠唱。
「氷結の棘柱撃ッ!!」
ミリアは唱え、水溜まりの地面から氷結の棘柱を一斉展開し、漆黒の聖職者に刺撃。一斉に展開した氷結の棘柱により、漆黒の聖職者達は赤黒い炎を燃やし、消滅………。
「ヲヲヲヲヲヲヲヲヲッ!!」
赤黒い炎を抜け、赤黒いオーラのサウルは飛び掛かって斬りかかる。
ミリアはショートソードを構え、ガード。
………しかし、暴走したサウルの剣撃の威力は強く、後退してしまう。さらに距離を作り、サウルは赤黒いオーラを漂わせた短剣を振るい………。
「シャアッ!!」
サウルは獣のような鋭い瞳をギラリと輝かせ、ショートソードで斬り払うミリアに1発の剣撃を与える。
暴走状態のサウルは狂戦士。本来の力は低く、主に道具を使用した戦術。しかし、(魔の宝玉)の光に精神コントロールされている為、力量が異次元である。
「ハァ………ハァ………ハァ………」
ミリアに反撃のスキも与えず、溜め息。
「ヲヲヲヲッ!!」
暴走状態のサウルは跳び下がり、咆哮。
そして、再び赤黒い炎の裂け目を出現させ、ランスを装備した5体の漆黒の聖職者を召喚する。
ミリアは………気持ちが衰弱。




