第8話 名前はマスク・ド・a
───〈中央都市アフタヌーン〉───
白、チョコレート色のレンガ造り建造物、気品な店舗がズラリと建ち並び、石造りの地面、道端には街路樹が生え、美味しそうな香りがする露店が営業し、大勢の人々がゾロゾロと行き交っている。
戦士、魔法使い、格闘家、錬金術師、など様々な職業の人間が住み、北に魔法学区、東区には工業地区、南区には居住地区、中央区には冒険者ギルド。
───〈とある公園〉───
「初めて来て、色々あったわ……」
ベンチに座り込むのはアンゼシカ(真美)。
勢いで王都を飛び出し、ここに着いたのは3日前。中央都市アフタヌーンに辿り着いて、その足で冒険者ギルドの酒場に立ち寄り、受付に追放された王女を見つけて、助けて、また冒険者ギルドに搬送して、その後は何をしたら良いのか分からないからこーしてベンチに座っている。さて、どうやってラスボスエンドを回避したら良いのかな……と、考える。まず、ミリアに正体を知られたら物語上カオスになる。追放された王女が街を歩いていて自分を追放した悪役令嬢とばったり再会とか、ゲームとしては何がしたいのか分からない星1つレベルのクソゲーである……。
自分が出来る事は、裏方としてミリアをピンチをサポートとし、好感度を上げる……最初はこれしか思いつかない。正体を知られないように、あくまでも裏方。主人公らしくない立ち位置だが、仕方ない。
ゲームやマンガ、アニメのキャラクターに、ピンチになったら駆けつけるキャラクターがいたが、それはそれでかっこ良い。
「ハアァ~~~~……………」
アンゼシカ(真美)はベンチに座り、溜め息。
ミリアを救出して3日後、安宿で過ごしてその日暮らしの毎日。状況としては、ハローワーク通いの求職者。この世界に来て、ハロワに通う人の気持ちが分かるなんて思いもしなかった。
1分、2分、3分……沈黙、ふと、左を向くと……。
「何で君がいるのかしら?」
「アナタに会いたかったから……それが理由ではだめですか?」
ミリアは答える。
「……まぁ、その。身体は大丈夫ですか?」
ミリアの表情にドキッとした……アンゼシカ(真美)は尋ねる。先程、激しいダメージを負っていた為、心配していた。
「まだ少し痛みますけど、大丈夫です……その名前を伺ってもよろしいですか?」
「そうだね……名前はマスク・ド・a。弱きを助け強きを挫き、人々の危機、君の危機になれば私は現れる正義のミカタかな……」
アンゼシカ(真美)は説明。
「抱きついてもいいですか?」
「どうしてそうなるの?」
「その、マスク・ド・aさん、私が憧れていた人にその……ダメですか?」
ミリアはウルウルした瞳で睨む。
「………まぁ、君はまだ病み上がり、無理をしない事だね………」
アンゼシカ(真美)は咳払い。ウルウルしたミリアの瞳を反らす。
ヤバい、年下の女の子に意識してしまいそうになった。そしてマントを広げ、立ち去る。マスク・ド・aって、勢いで変なアダ名を作ってしまった。まぁ、正体がバレるよりはマシか……。
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