第85話 険悪なムード
ミリアは体調を整え、サウルと一緒に通路を歩いていた。土ぼこりが空気中に漂い、長い年月の流れにより、壁や天井自体は古くなっている。
するとサウルは何気なく口を開く………。
「そーいや、アンタはあのマスクの奴と知り合いって答えたよな?どんな関係なんだ?」
サウルは再び尋ねる。
「マスク・ド・a様は………」
ミリアはサウルの質問に困り、困惑。どんな関係と言われても………どう説明をすれば………。
「答えに困るならいい………けど、そんな簡単な関係ならアンタも後ろに気をつけた方が良いぜ」
「マスク・ド・a様はそんな事をしませんッ!!」
「どうだか………もしかしたら、アンタの知らない所で、アンタが持っている何かを狙い、もしかしたら企んでいるかもしれないぜ………」
「どうしてそんな事を言うんですか?じゃあ、アレックスさんとデビッドさん、ロメロさんも一緒って言うんですか?」
「アイツらは………」
ミリアの言葉に困惑するサウル。
自身の性格について、まず仲間には気をつける。最初は良い奴でも、後に何らかの形で裏切る事もあるからだ。最初、ミリア達と仲間を申し出た時は気分の流れであり、仲間を申し出た理由は様々な依頼をする上で必要だからだ。基本、仲間は信用はしない。
マスク・ド・aを疑う理由………。
それはあまりにも簡単だからだ。奴は自分達の前に都合よく現れ、助けてくれるからだ。何の報酬も発生せず、ただの正義の味方として現れる。その簡単な動機の人間が裏で何を企んでいるか怖いからだ。
そして沈黙し、重い雰囲気を漂わせる。
(少し嫌な事を言ったかな………)
サウルは反省。一方のミリア、不快な様子をうかべて、沈黙している。
すると………。
────ッ!!
サウルの頭の中、何かが思い浮かんで来た。
何年か前、とある廃墟の町にて、両親と大勢の人達が王国軍に連行され虐殺される光景に、少年と少女が泣き叫ぶ。
そして次………大勢の仲間達が倒れ、傷だらけのサウルは出血する腕を押さえ、報酬金が入った袋を持った黒い人影を睨みつけていた。
黒い人影はケラケラとあざ笑い、走り去る。
「ハァ………ハァ………ハァ………」
喉の奥から充満するような熱気。サウルは両手で頭を抱え、震わせる。過去に経験したトラウマ、それらが流れ込んできたらしい。
「サウルさんッ!!」
今度はミリアが駆け寄る。
「何でもないッ!!」
サウルは額からは汗を流し、一言。何故なら言いたくない思い出であり、言葉を発する気持ちではない。
とりあえず、ひと休みをする事に………。




