第77話 10年前Part19・変わる人間関係
───ミリア(私)は城内の廊下を歩いていた。
張り裂けるような気持ちを抱き、すれ違う大臣にお辞儀をしつつ、部屋に戻る途中である。
その表情は何処か不安かつ、その不安の中に安堵している自分がいると言う心境だ。
………それは数十分前。
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───〈国王の私室〉────
「余命1年?………」
ミリアは父上の説明に言葉を失う。
「そうだ。どんな医師ですら治す事は敵わない不治の病だ………」
イザークは医師の隣に立ち、口を開いた。
病の名は不明、その症状はまるで呪いのように全身を侵略していく病であり、治療方法がない。
この所、血を吐く事や意識が遠退くことが多くなり、医師の診断では余命1年を宣告された。
我が死んだら………
王国の未来を、そして■■■■■■を頼んだ………我が娘よ………。
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ミリアは父上の言葉を思い出し、廊下を歩く。
父上が最後に言ったあの言葉。うまく聞き取れず、まるで人がアレを理解してはいけない。そんな感じがした。恐らく、14歳の私では理解出来ない………今はそう受け止めるのである。
(あっ…………)
すると………ミリアの前方から歩いて来たのは複数の上官兵士と意見交換中の女性将軍。その姿に、ミリアは思わず気持ちが高潮し、楽しかった思い出が浮かび上がる。
「東側の戦況が不利な状況です」
「西側の戦況は我が軍が優勢、民族派最大勢力が陥落するのは時間の問題かと思われます………」
「中央地域は拮抗しています。しかし増援物資が足らず、兵士達が疲弊しております」
「中央地域はどちらに傾きつつある?」
アンゼシカ将軍は尋ねる。
「数は我が軍。地形的には敵が有利でごさいます」
上官兵は答えた。
「西側の第3部隊は東側に派遣。西側を制圧した後は中央地域に全部隊を派遣、医療部隊と魔法使いの部隊を増援を送れ。あと物資も忘れるなっ」
アンゼシカ将軍はテキパキと指揮。
ミリアは久しぶりのアンゼシカお姉様に懐かしい気持ちになり、安心した様子。近づいてくる兵士達とアンゼシカ将軍。アンゼシカお姉様が自身の世話係を解任された時は寂しさに泣いたが………。
「おねえ………」
「南方面の第1と第2部隊は東側に、第3第4部隊は中央地域に派遣だ。我が軍に敗戦の文字はない、絶対に勝利しろッ!!」
アンゼシカ将軍はミリアを通り過ぎる。まるで見えていないように………。
(……………)
ミリアは立ち止まり、沈黙した。
そう………彼女はとうに切り替え、違う世界で生きている。所詮、人間関係はそんなものだ。
離れたら時間は進み、人間は変わるものであり、疎遠になり、そして新しい人間関係を構築する。それが人間なんだ………。
私なんて、ただ7年間の人間関係だ………。




