第75話 10年前Part17・別れは突然に……。
社交会から何日か経過したある日………。
───〈謁見の間〉───
玉座には男性が腰掛け、側近の執事が隣に待機。
容姿は50代。たてがみのような金髪にヒゲ、鷹のような強い瞳の中年男性。名はイザーク・ミア・シュバルツ、クロフォード王国5代目国王陛下である。民族支配や反対側の勢力の排除などの政策を実施し、国民からは恐れられている。
「アンゼシカ・ヨハーソンよ、面を上げよ………」
イザークは低い声を響かせる。
「はっ………」
片膝を着き、敬意を払うアンゼシカ・ヨハーソンは緊張感を漂わせ、頭を上げる。
イザーク陛下は上機嫌に口を開く。
「お主には我がミリアが世話になっておる。それだけではなく、戦場では大した活躍振りだと耳に入っておる………」
「恐縮です」
イザークの言葉にアンゼシカはお辞儀。
「この前の社交会では、我が娘のダンスの相手をしたそうだな?」
「兵士の立場でありながら、出しゃばりをお許しください………」
「いや………よいダンスだったと聞いてる。少し社交会のデビューには早かれ、ミリアには良い経験にはなったであろう」
イザークは笑う。
「恐れ入ります………」
アンゼシカは綱渡りのような緊張感を漂わせ、お辞儀。
「世間話はこれ位にして………お主を呼び出したのには理由がある………」
「理由ですか?」と、アンゼシカ。
そしてイザーク陛下は低い声を響かせる。
「お主をミリアの世話役を解任。そして、これまでの功績を称え、将軍として軍の指揮を任せたい………」
「私を………ミリア様の世話係を解任?」
陛下のセリフに、アンゼシカは凍りつく。
「民族派の反対勢力が過激さが増しておる。お主のような有望な兵士にあらゆる指揮を任せ、戦況を有利にしたい………これは命令だ」
イザークは言った………。強い言葉、国王の命令は絶対であり、兵士には拒否権はない。こうして、アンゼシカ・ヨハーソンは7年務めて来たミリアの世話係を解任され、別れ突然やって来た。
「分かりました………」
納得が出来ないままアンゼシカは涙を流し、お辞儀して立ち上がり、立ち去る。
そして振り向き際、陛下に視線を向ける………。
すべテヲ………マだまダ
いカり、憎しみ、カなしみが足りぬ………。
イザーク陛下の全身を包み込むように………黒い異形の影がパキパキと燃え盛り、不気味に笑っていた。
(そうか………アレが、元凶か………)
アンゼシカは冷や汗を流し、何かを確信した。
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