第74話 10年前Part16・社交会
それから数日後………。
場所は舞踏会の大広間、夜の会場に集まっているのは王国の貴族達。各テーブルには王宮料理が置かれ、大理石の床が広がっている。
大広間全体を支配し、空中から見下ろすように吊るされているのは巨大なシャンデリア。今日は王族主催の社交会。貴族達はシャンパンが注がれたグラスを片手に持ち、様々な話を繰り広げ、談笑する。
「王族主催の社交界に参加して頂き、ありがとうございます………」
袖無しのドレスを着用したミリアは両手のスカートを軽く上げ、正面の男性侯爵貴族に深々とお辞儀。
「これは姫様、王族主催の社交会にお招き頂き、真に光栄でございます」
男性侯爵貴族は敬意を払い、お辞儀。服装による身だしなみ、礼儀作法や言葉使いは王族に対して最大の忠誠心を表している。王族主催のイベントに呼ばれたら大変名誉な事である。
ミリアはノンアルコールのシャンパンが注がれたグラスを片手に、参加している貴族達に挨拶して回るのである。
「ミリア姫様っ」
その1人、とある侯爵家の息子はミリアに挨拶。年はミリアと同年代、ミリアもお辞儀。
その後、同年代の少年少女の貴族達が次々と駆け寄り、お辞儀するのである。彼らは自身に最大に敬意を払う事で、王族と良い関係を築き、家柄の価値を上げていく事を狙っている。上手く進めば側近大臣に出世したり、結婚相手に選ばれたり、そんな思惑が子供の時から教えられている。
★★★★★★
貴族達は社交ダンスを楽しみ、会場にはクラシックな演奏家による音楽が奏でられていた。
あれは大人の世界。ミリアは社交ダンスの光景を眺めていた………。
「ミリア様………」
ミリアに声を掛けてきたのはアンゼシカ・ヨハーソン。衣装は軍服コートの姿、ここに招かれた理由は最近の活躍が評価を受け、招待された。
「お姉様………王族主催の社交会に参加頂き、ありがとうございます」
ミリアはお辞儀。
「招待して頂き、光栄の限りです。そのドレス、お似合いでございます」
アンゼシカは深々と敬意を払い、頭を下げる。
「あ、ありがとうございます」
アンゼシカの言葉にミリアはドキッとなる。
やっぱり、訓練では厳しいけど、アンゼシカお姉様はお姉様だ。
少し間を置いた後、ミリアは口を開く………。
「あの、お姉様………」
「何でしょう?」
「私と………ダンスの相手をして頂けませんか?」
ミリアはモジモジした様子で言った。
「このアンゼシカ・ヨハーソン。喜んでお相手しましょう」
アンゼシカはミリアの手を取り、ダンス中の貴族達に赴くのである。
初めての社交ダンスに、不器用なミリア。それをリードするように、アンゼシカは華麗な足さばきでダンスを披露。
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