第73話 10年前part15・アンゼシカの訓練
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ミリアは訓練場の休憩スペースのベンチに座り、うつ向いていた。初めての戦術訓練、アンゼシカの厳しい訓練に軽いノイローゼ。
優しかったお姉様、あれだけ厳しい訓練をされたら裏切られた気持ちになり、自分の事が嫌いなのかな………と、涙目になる。
「ミリア様………」
休憩スペースにアンゼシカが駆け寄って来た。
「お姉様………」
「大丈夫ですか?少々、厳しすぎましたか?」
アンゼシカは心配な様子。確かにミリア様は軍人ではなく王族の姫君。優しい性格であり、剣術など出来ないのは無理もない………。
「いえ、剣術訓練は王族の義務、気にしないで下さい。それとホッとしました、お姉様は私の事が嫌いなのかなって………」
「違います、断じて違いますっ!!ミリア様を嫌いなんて思ってませんっ!!」
アンゼシカは否定した。厳しいのはミリアの事を嫌っている訳ではなく、王様の命令でもあり、兵士が戦場で任務を遂行出来る為、生き残る為、戦術訓練は厳しくしなければならない。
「それなら安心しました。なら、逆にもっと教えて欲しいです。剣術だけでなく、魔法とかも………」
ミリアは言う。訓練をしていて、自分の弱さを徹底的に思い知らされ、強くなりたいと願っていた。
「そうですか………なら、姫様の望み通り、このアンゼシカ・ヨハーソン。指導致しますッ!!」
アンゼシカは気持ちを燃やし、張り切る。ミリア様がもっと教えて欲しいと頼み込んだ為、期待に応えなければ………。
───次の訓練は、魔法を扱った訓練である。
並んでいるのは5体の訓練用のカカシ。まずはアンゼシカが詠唱し、手の平に5体の雷球を出現させ、そして放つ。
5発の雷球は5体のカカシに命中し、バチバチと雷流を発生させる。なお、このカカシは剣術、槍術、槌術、そして魔法に対してはある程度の耐久力があり、壊れない。
「まずはこんなもんだ。やってみるがいい………」
「はいっ」
アンゼシカの言葉に返事し、ミリアは魔法の書物を閉じ、詠唱。5体の雷球を出現させ、放つ。
5体の雷球は5体のカカシに命中し、弱々しいがバチバチしている。
「弱々しいが、すぐに魔法が唱えられるとは、中々な素質をお持ちですね」
アンゼシカはホメる。教えたらもっと成長するに違いないと確信した。
「ありがとうございます」
ミリアは額からは汗を流して嬉しい笑顔。
「オホン………まず、威力をあげるにはな………」
アンゼシカはミリアの笑顔にドキッと咳払いをしつつ、魔法の書物を広げ、色々と指導。
こうして、訓練の時間は過ぎていく………。
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