第71話 10年前Part13・壮大な光景
───次の日の朝。
アンゼシカはミリア様を軍馬に乗せ、西の街道を歩いていた。街道の周囲は山岳地帯に囲まれ、山岳のスキマから轟風が吹き付け、息吹のような音を響かせ、後ろに掴まるミリアの貴族風のワンピースの衣類がバサバサと風で揺らし、身体が吹き飛ばされそうな感覚になる。
頼んだのはミリア。城の外を見たいから連れて行って欲しいと頼まれた。決して禁じられた駆け落ちではない。
───ミリアは瞳を閉じ、吹き飛ばされないようにアンゼシカの身体にしがみつき、掴まる。
余りにも吹き付ける風が強い為、声を出そうにも出せない為、2人は沈黙。
それから………10分後。
山岳地帯に囲まれた街道を抜け、アンゼシカは縄を引き、軍馬を止める。
「見て下さい、ミリア様………」
アンゼシカは言った。
アンゼシカの言葉に、ミリアは閉じていた瞳を少しづつ、開くのである………。
「うわっ…………」
ミリアは視界に広がる景色に絶句していた。
広大な景色により、全身の五感が染み渡り、溶けていくように……初めて外の絶景を感じるのである。
そこは別世界のような大平原。
広大な芝生が全域に行き渡り、芝生はヘビのような波風を発生させ、余りにも壮大な光景である。
「どうですかミリア様?」
アンゼシカは尋ねる。
この景色を見たら、解放された気分が行き渡る。是非ともミリア様に見せたいと連れてきたのだ。
「凄い景色………」
ミリアはなびかせる髪を押さえながら答えた。何故なら言葉が思い浮かばない。
「確かに凄い景色です。私もこれを初めて見た時は言葉が浮かびませんでした」
「空が広くて、何もかも広くて………」
ミリアは高ぶった気持ちで景色を例えようと口を開くが………上手く例えられない。
そんなミリアが可愛らしい………アンゼシカは笑み浮かべ、尋ねる。
「ハハハハ………気に入りましたか?」
「うん………ねぇお姉様。私、あの景色の風を感じたい、走ってちょうだいっ」
ミリアは言った。
「了解しましたっ」
アンゼシカは縄を打ち、軍馬を走らせる。
ミリアを乗せた軍馬は平原を壮大に駆け走る。風を切り、大空全体を眺めるように………。
芝生をパカパカと踏む蹄の音が響き渡り、ミリアは全身を解放されたかのように風を感じ、そして理解し、アンゼシカの背中に掴まるのである。
「もっとスピードを出して」
「お安い御用ですっ。振り落とされないようにしっかり掴まって下さいっ」
ミリアの命令に、アンゼシカはさらにスピードをアップさせ、軍馬を駆け走る。
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