第69話 10年前part11・裁定結果
そのとき、休憩スペースにグシャ………と、鈍い音が響き渡る。アンゼシカの拳に血が染み渡り、地面にポタポタとこぼれ落ちる。アンゼシカの気持ちは灼熱し、紅一色に支配された。
───ッ!!
アンゼシカは言葉が思い浮かばない。頭の中はグツグツと沸騰、ひたすら若い男性兵士達を殴り倒していた。地面に流血が行き渡り、小さな貯め池を表現している。
止めろアンゼシカッ!!
途中、他の兵士達が急いで駆け寄り、アンゼシカを制止する為に取り押さえるが、力強く振り払われ、拳を振るう。
めて………く………
す………なか………た。
先程までバカにして笑っていた若い男性兵士達は顔面中に青アザ、右目は腫れ傷。おまけに歯が折れた事により滑舌が不安定になり、殺されてしまうと思い、涙ながらに謝る。
しかし、アンゼシカの耳は全ての声を遮断していた。
ミリア様を………
キサマ達は………ミリア様を………
アンゼシカは怒りに身を任せ、まるで凶暴化した獣のように暴走。相手の胸ぐらを掴んで立たせ、拳を何度も放つ。
生暖かい感触が拳に行き渡り、灼熱した気持ちは止む様子はない。
★★★★★★
───〈取調・相談室〉───
アンゼシカは連行され、取調を受けていた。ちなみに重傷を負った若い男性兵士達は医務室にて治療中である。
色々と事情聴取を尋ねられ、アンゼシカはミリア様を、彼らが王族を侮辱した事を理由に激怒したと説明した。これから査問委員会に報告され、アンゼシカの処遇が決まる。
★★★★★★
数時間後、アンゼシカは会議室に連行され、緊迫感が漂う被告台に立たされ、厳つい裁定官は書類をトントンと畳み、結果が言い渡される。
アンゼシカはゴクッと息を呑む。
「アンゼシカ・ヨハーソン一等兵、1週間の謹慎処分に処す」
裁定官は言った。アンゼシカの処遇は軽く済んだ。暴力行為は規律違反だが、王族を侮辱した者に制裁を加えた事により、減刑になった。
しかし………重傷を負った若い男性兵士達は監獄送りになり、極刑にはならないが、厳罰が下ることになる。
クロフォード王国では王族に対しての非難や侮辱、批判は重罪になる。
監獄送りになった者の末路は町の宿無しに聞いてみれば知ることになる………。聞けば釈放後に財産を失い、家を差し押さえられ、戸籍を失うらしい。
「失礼しましたっ」
アンゼシカは敬礼し、会議室を後にした。
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