第65話 10年前part7・散歩
───〈城外の庭園〉───
場所は城の外の庭園。部屋を退室し、ミリアとアンゼシカは花畑を眺めて歩いていた。
アンゼシカが大人気無くチェスでミリアを叩きのめした為、変に空気が重く、空気を変える為である。花畑には蝶達が甘い花の蜜に誘われ、飛び回る。レンガ造りの地面が行き渡り、春の季節により温暖な気温に包まれる。
花畑に飛び回る蝶に、ミリアは………。
「あ、蝶だっ………」
ミリアは空中にヒラヒラと羽ばたく蝶をジィーと眺めていた。蝶は花に止まり、花の密を吸っている。
これはチャンスだ。と、重い空気を変える為………この流れに乗るようにアンゼシカは口を開く。
「もう春ですね。姫様は花は好きですか?」
アンゼシカの質問にミリアは………。
「うーん、そんなにぃ………」
(……………)
ヤバい、話が滑ってしまった………花は好きだと思ってはいたが、ミリアの意外な答えにアンゼシカは苦笑いを浮かべ、困惑してしまう。気分転換に散歩でも連れて来たが、失敗してしまったか………。
するとミリアは………。
「でも、アンゼシカお姉様はだーいすきっ」
ミリアはキュートなスマイルを浮かべ、アンゼシカにガバッと抱きつくのである。
アンゼシカはミリアを抱き締め………
「私も、ミリア様が大好きでございます」
アンゼシカはニコッと返す。
王族としての気遣いではなく、本心である。戦場で死にかける度、大勢の敵を殺して人間性を忘れてしまいそうになる度にミリア様の笑顔を思い出し、救われるからだ。
「オネェ〜~様ぁ~~~」
返した言葉が嬉しかったのか………ミリアは上機嫌に笑顔を浮かべ、アンゼシカは彼女の頭をポンポンと撫でる。
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(幸せそうですねミリア様………)
そんな光景を2人を見守る侍女達はホッとした様子でクスクスと笑っている。
アンゼシカと出会う前のミリアはあまり外室せず、侍女達が廊下ですれ違っても何処か無理をした笑顔を浮かべ、挨拶する位だ。部屋の外からミリアのすすり泣く声が聞こえたか聞こえ無かったか………。
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「くしゅんっ」
「ミリア様、鼻水が垂れてますよ………」
くしゃみを出し、ミリアの鼻から鼻水が糸を垂らしている。それをアンゼシカはハンカチでミリアの鼻水を拭い取る。
「へっくしっ」
ミリアはまたくしゃみ。
1回、2回、3回………連続してくしゃみを出すのである。ミリアが花がそんなに好きじゃない理由、花粉症になりやすい体質だからだ。
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