第55話 自分ではない力
「これは一体?」
───無限のD(インフィニティD)の姿にメルディは驚愕し、言葉を失う。赤黒い威圧感、まるでこの世の理を無視したかのような雰囲気だ。異質な雰囲気に圧され、自身の肌が鳥肌のようにプツプツと栗立ち、震え上がる。
無限のD(インフィニティD)による異質な雰囲気の前では、意識の離脱すら許されない。それは直感で行き渡る神経のように………。
一瞬にしてメルディの右側に移動し、無限のD(インフィニティD)の拳撃が伸びる。
一瞬の拳撃に反応し、咄嗟にショートソードを構え、受け止め………。
「なっ………」
メルディは驚愕するしかない。拳撃により吹き飛ばされ、本棚に全身を叩きつけられ………書物が空中に広がり、地面に散らばる。
この私が………スピードが察知が出来ないだと?
すぐに体勢を立て直し、察知力を最大に行き渡らせ、意識を集中させる。意識の離脱は、死を意味する。
距離は至近距離。無限のD(インフィニティD)は拳を伸ばし、拳撃。1発の拳撃につき、50発の拳撃が炸裂。
────ッ!!
拳撃で本棚ごと破壊され、全身に拳撃がヒットしたメルディは後方に吹き飛ばされ………。
───この私が………。
空中に舞うメルディに、さらに無限のD(インフィニティD)は右側に移動し、すぐに空中キャッチ………首元を掴み取り、持ち上げる。
余りにも異次元………首元を掴み取られるメルディは沈黙していた。意識が………混濁し、白い霧が視界を霞ませ、徐々に広がる………。
全身にダメージが行き渡り、感覚すら忘れていた。
首元を掴まれ、ボキボキと鈍い音が響き、このままでは………。
………が……うっ。
やめ……
無限のD(インフィニティD)の頭の中、ミリアの拒否反応の声が響かせる。そしてメルディを解放し、両手で頭を抱えて苦しむ。
「ゲホゲホ………何が?」
床に叩きつけられ、解放されたメルディは咳き込み、様子を伺う。
すりと無限のD(インフィニィD)は苦しみ、パキパキと全身から光を放出し、解放されたかのように元のミリアに戻る。
「私は………私は………」
ミリアは畏怖し、カタカタと震えていた。自身が変異した無限のD(インフィニティD)に、自身とは正反対な暴力的な力に………変身状態では怒り、憎しみ、悲しみが行き渡り、それにどこか心地よい感覚になった自身が………まるで本能に身を任せてしまったかのように………。
こんなの自分ではないッ!!
私は頭を抱え、力を否定し、泣き叫ぶ。
違う、違う………と、言い聞かせ、全身を震わせる。




