劇場版ストーリー33
(あれから、そんなに年月が流れていたなんてな………)
甲板にてシェバは腕を組み、水しぶきを浴びて海上から交易船を眺める。幼少の頃、理不尽な場所に連れてこられ、強制的に課された訓練と血の滲むような日々が、まるで昨日の出来事のように思い出す。
───訓練の際、時に上官に殴り飛ばされたり、戦場に出た際には、同期の人間が戦場で死んだ光景も見たこともある。
すると、視線の先に交易船が見えて来た。目的は交易船の制圧、そして本来の目的は共和国に国際的な非難を与え、政府の力を弱体化させる。国交を結んでいる国々から国際的な責任問題を追及され、そうなればあらゆる協定から脱退されたり、関係が破壊され、そして財政難を引き起こし、弱体化した所をクーデターをする流れだ。
「上官、例の交易船が見えました。いかがなさいます?」
後ろに控えている部下の工作員達は尋ねる。
シェバは黒いマントからロングソードを片手で構え、冷静な表情で告げるのである。
「ああ、制圧する。皆よ、私に続けっ」
「了解っ!!」
───そして、小型の武装船は交易船の下に横に、ぐらぐらと揺られながら密着させる。
工作員達は、一斉にフック付きのロープを交易船の手すりに向けて投げ放ち、くいっと引っ掛ける。そして工作員達は引っ掛けたロープを掴み、ジャンプして登り、交易船の中に突入する。
───敵襲っ!!
交易船全体に、船員達の声が響き渡る。
★★★★★★
ミリア達は小型の高速船に乗り、北南の海域を前進する。ボートは魔力を動力源とした高速船であり、最新型だ。
あれは3時間前、昼過ぎの出来事だった。
冒険者ギルドの酒場にある応接室にて、ミリアはリチャード首相から事件の内容を知る。
「そんな、シェバさんが………」
「そうだ………我が国の諜報工作員によれば、彼女がテログループ(新政府バロム)のスパイであると情報が入った。ギルドのサポート役として君達に接触し、クエストの情報を流していたらしい」
リチャード首相は言う。
「だから、私達のいる所に(新政府バロム)の人達が現れたのですね………」
ミリアは言う。そして辻褄が結びついた。
「そして、あってはならない事だが………今日の議事堂爆発の事故、あれは事故ではなく、事件だ。それは野党議員に扮したテロリストが私の執務室に訪れ、機密資料を盗み出そうとしていたらしい。警備兵が捕らえようとした所、自爆したと言う訳だ」
リチャード首相は事件の真相を話した。
「何てことを………」
ミリアは驚愕する。
(………この流れ、もしかして劇場版のストーリーと同じなのでは?)
アンゼシカの記憶の中に、劇場版のストーリーが流れてくる。




