劇場版ストーリー32
───猿ぐつわを固定され、馬車に押し込まれる。謎の武装集団に誘拐されたシェバ。夜の道をカタカタと揺らし、走る荷台馬車。何処に連れて行かれるのだろう?………と、芋虫の体勢で手足を縛られ、キョロキョロと辺りを眺める。
しかし、暗くて何も見えない。分かるのは、自身と同じような年頃の少年少女、5名がプルプルと震え………両手と両足に、鎖付きの手錠で拘束されていた。
時刻は朝、すると………荷台馬車が停止。荷台口の仕切りのシートを広げ、作業服の男性はニヤリと笑う。
「男が3人と、女が2人………どいつもこいつも健康な身体だ。ガキは従順で、それなりに育て甲斐はあるだろう?」
「ご苦労だったな………これは報酬だ」
作業服の男性の隣に、黒いマントを着用した人物が入って来て、お金が入った麻袋を差し出す。
───そして………荷台馬車から出される子供達。中は広々とした空間で、夏なのに涼しい石造りの屋内になっている。いきなりこの場所に連れてこられた子供達、キョロキョロと辺りを眺めて涙目になる。
すると、甲冑を着用したスキンヘッドの男性がドアを開いて現れ、子供達はびくっとなる。
「今から訓練を始めるっ!!準備しろっ!!」
スキンヘッドの男性の怒号に、いきなりの事で理解できない子供達。
「やだぁ〜〜〜お家に帰りたい………」
泣き出す1人の少年。
するとスキンヘッドの男性は泣き出す少年を、殴り飛ばす。殴り飛ばされた少年は壁に叩きつけられ、気絶する。
「外に出て訓練だ、今日から俺が貴様らの上官で、貴様らが部下だ。従わなければ、殺す」
スキンヘッドの男性はそう宣言する。
それから………シェバは反政府の武装集団の兵士として、育てられるのである。この場所に連れてこられた理由は兵士に育てる為、何故なら子供は従順で、目の前で親を殺害して帰る場所を破壊してしまえば、従順にならざるを得ない。
───彼等は(新政府バロム)。力を崇拝し、人間を魔人の供物として捧げ、合成モンスターを生成したり、強い力を得ることを正当化した奴らだ。
母親と言う帰る場所を失い、訓練をする日々を送るシェバ。10歳で戦場に出て、殺しの日々と訓練が私を洗脳していく。
「シェバ、お前に知らせだ。お前の父親であるスアレスは死んだ、民族支配を打倒する為に戦って立派な最期だったらしい」
言ったのはスキンヘッドの男性工作員。始めに私を訓練した教官である。
「そうですか………」
シェバは言う。漆黒のフード付きのマントに甲冑を装備。戦場を経験した為、体格は鍛えられている。
───情報源は何処から手に入れたのか、父親が死んだ事、そんな事はどうでもいい。




