劇場版ストーリー29
時間帯は昼過ぎ。
───ミリア達がクエストを終え、首都バーモントに戻って来た時、町中は騒然した雰囲気に包まれていた。モクモクと黒い煙が立ち昇り、発生している方向は共和国議事堂。
黒い煙が立ち昇っている方向に、野次馬の如く市民達が集まる。
「おい、何があったんだ?」
アレックスは、野次馬の一般市民に尋ねる。
「火事だそうだ。何やら政府の議事堂からで、ガス爆発による事故らしい………」と、市民は答える。情報源は政府議事堂を警備している近衛兵であり、危険なので立ち去るように促された。
政府議事堂は機密施設の為、具体的な原因は市民には伝えられない。
───色々ときな臭いが……政府関係の施設に事故や事件が発生し、機密上によりそれは仕方ない………ここで考えていても時間の無駄。その後、ミリア達は冒険者ギルドの酒場に足を運ぶのである。
「あ………皆さん、ご無事でしたか?」
ドアを開き、冒険者ギルドの酒場に入ると、受付けの女性が血相を変えて出迎える。
「あの………シェバは?」
アレックスは言う。どうして………ギルドのサポート役の彼女がいないのかは少し気になるが、それは後回しだ。
「あの娘は少し用事で、席を外しています。それより………アナタ方に会いたい人がいるって、戻って来たら応接室に来てくださいって………」
受付けの女性は伝える。その表情は緊張感に満ちており、口調が震えている。
おそらく政府関係者クラス、女性の緊張感を察し、ミリアは前に出る。
「すいません………応接室には私と、マスク・ド・a様が行きます。あと、皆さんは食事でも済ませてください」
アンゼシカの腕を組み、ミリアは受付けの女性に言った。そしてミリアの言葉にアレックス達は(行ってこい、何かあったら俺達を呼びな……)と、了解して快く送り出す。
廊下を歩き、受付けの女性に案内されるミリアとアンゼシカ。そして応接室とプレートが掛けられた扉の前に、受付けの女性は頭を下げて言う。
「こちらに、例の方が待っています」
「案内、ご苦労様です」
ミリアは言う。
受付けの女性は、扉をコンコンっと軽くノックをする。
「閣下、頼まれていた客人を呼んで参りました」
───うむ、入って来ると良い。と、受付けの女性の言葉に、応接室の中にいる人物は落ち着いた口調で言ってくる。閣下………その言葉に、ミリアは室内にいる人物の正体を察した。共和国議事堂で起こった事故、そしてこのタイミングにおいて、極秘かつ非公式の話し合い。
「では、失礼します」
2人は応接室の中に入る。




