劇場版ストーリー26
───その時、ここにいる者達は戦慄する。今、起こっている状況に皆は言葉を失い、気持ちは萎縮し、硬直する。そして………全身から流れる冷や汗、背筋が凍り、震えるのである。
「敵前逃亡を図った事により、貴様らは死刑だ」
黒髪ロングをさらっと揺らし、女性工作員は漆黒のロングソードを抜き、一瞬の速さで振るう。
「かひゅ………」
1体、2体、3体、4体………それは次々と女性工作員が振るう漆黒のロングソードによりテロリスト工作員達は斬り裂かれ、空中に血しぶきを発し、倒れ伏していく。
残酷で、あまりにも一方的で………敵前逃亡を弁解する暇さえ許されない。そして………辺りに広がるのは、処刑された死体の山々。残り1人となった工作員の前に、女性工作員は漆黒のロングソードを片手で構え刃に付着した返り血を払い、ピチャピチャと音を立て、地面にポツポツと出来あがった血溜まりを踏みながらゆっくりと………お迎えに来た死神の如く、前進する。
生き残った工作員は、命の危機に瀕する。
「許してください………どうか、命だけは………」
彼はプルプルと震える声で拝み、殺されたくない一心で命を乞う。しかし、彼女はそれを許さない………。
「ならん、敵を前に逃亡を図った貴様の積みは重い………。せめて、苦しまないように処刑してやるから………」
女性工作員は言った。漆黒のフェイスマスクの瞳が、血の涙の如く赤くギラリと輝きを放ち、ロングソードを振り上げる。
───そして、降される断罪のように振り下ろされる。
工作員は覚悟を決め、瞳を閉じる。自身がこれまで歩んできた人生が、走馬灯のように思い出す…………。しかし、いつになっても振り下ろされない。彼は閉じていた瞳を開く。
「大丈夫か?」
工作員である彼の前に、アンゼシカが駆け付け、振り下ろされるロングソードを大聖剣でガードしていた。
「どうして、アンタが?………」
工作員はいう。敗北したが、さっきは敵同士だった………なのにどうして助けた。と、彼は混乱する。
「逃げてください………」
アンゼシカは身体をプルプルと震わせて刃を受け止め、後ろ向きで彼に告げる。そして工作員の彼は全速力でダッシュし、戦場から逃げる。
「何だ、貴様は?………」
「どうして、こんな事をするんです?同じ仲間のハズじゃないですか?」
アンゼシカの質問に、女性工作員はバックステップで後退して距離を取り直し、ロングソードを構え直す。
「仲間だからコソなのだよ。仲間が間違いをすれば、同じ仲間がそれを正したまでの事よ………」
女性工作員は言って、先の殺戮を正当化する。




