劇場版ストーリー14
───何をする気だ?あの小娘は………と、言わんばかりに(新政府バロム)の工作員達は額から汗を流し、まるで飛竜に睨み付けられたような緊張感により、ジリジリと後退する………。何故ならあの小娘からは、人間とは思えない威圧感を放っているからだ。
しかし奴らは知らない………目の前にいる小娘は飛竜に変身する亜人種だと言うことを。
小さな翼は、すぅ~~~とお腹が膨らむような息を吸い込む。
「お前ら…………覚悟しろよ。これを喰らったが最後、世界と言う世界が回るんだからな………逃げるなら、今のうちだぞ?」
アレックスはロングソードを担ぎ、不敵な様子で宣告してやる。コイツの伊吹きを喰らった事があるから言えるからだ。あと、撤退を勧める優しさも忘れない。コイツの伊吹きを喰らったら、奴らはどうなるかが楽しみだ………。と、アレックスは楽しみにする。
そして小さな翼は大きな口を、のど仏が見える位にガバッと開く。
───ぶはぁ~~~~~~~~……………。
まっ………茶色の息が、山林地帯全体に広がるのである。木々はパキパキと音を響かせて腐り果て、全ての植物が腐り果ててしまった。生息していた小動物達は異変に気づいて逃げようとしたが、次々と息絶えていく。
小さな翼の必殺技、臭い息だ。
「ぐわぁあああああああああああ……………」
小さな翼の臭い息をマトモに喰らい、(新政府バロム)の工作員達は断末魔の叫びを響かせて身体をピクピクさせ、倒れて片手を上げている。
「ふはははは……………ろうだ?ほのいひったか?」
アレックスは鼻を塞ぎ、笑うのである。臭い息をマトモに喰らった奴らは、あまりにも滑稽である。麻痺、毒、混乱、暗闇、沈黙と言った状態異常はきついだろう。
「てっ……………撤退だぁああああっ!!」
(新政府バロム)の工作員達は、状態異常のままの身体にムチを打って立ち上がり、酔っぱらいのような千鳥足で走り去って行く。
「これぞ、無血制圧って奴だな……………」
アレックスは冷静な表情でロングソードを鞘に納める。無駄な血を流さなかったのは大変、良いことだ。
───あれっくすぅ~~~………。
「待て、小さな翼っ!!」
アレックスの方に走ってくる小さな翼に、思わず逃げ走る。何故なら臭い息を吐き出した後の小さな翼の息は、めちゃめちゃ臭いからだ。吸えば奴らと同じように麻痺、毒、混乱、暗闇、沈黙の状態異常をプレゼントされる……………。
───ぎゃああああああああっ!!
小さな翼に捕まってしまったのか、アレックスの断末魔の叫びが大空に響かせるのである。




