劇場版ストーリー5
───後日………。時刻は朝、ミリア達は王族専用馬車に搭乗して東方面の街道を進み、とある場所に向かっていた。
「まったく、お前と来たらいつも突然だな?」
アレックスは背伸びし、座席にもたれ掛かる。
「あははは、どうもすいません………」
ミリアは頭をポリポリと掻いて、軽く謝るのである。するとデビッドは、苦言を呈するように横から口を開く。
「アレックスさん、ミリア様は国の女王陛下ですよ。その態度はよろしくないのでは?」
「あ、そうだった。つい、仲間の意識のままで言ってしまった………」
アレックスはうっかり。
「女王陛下、どうします?王族に対する不敬として、コヤツにどのような処分を下しますか?」
サウルはあざとらしく深々と頭を下げ、伺う。
「ってオイっ?」
サウルの提案に、アレックスは思わず声を出す。
「そんな………アレックスさんや皆さんは大切な仲間です、私は全然、そんな事は考えてません。むしろ、私は皆さんには、いつものように接して欲しいです」
ミリアはパタパタと手を振り、明確に否定する。何故なら皆は過去、数々の修羅場を潜り抜けた仲間達であるからだ。
「はぁ~〜〜、ありがたい………ミリア様〜〜〜」
自身の言動が不敬罪と聞き、思わずビビるアレックス。そしてミリアの優しい許しを知り、ホッを安心して頭を下げる。
フフっ………良い顔になりましたねミリア様。と、サウルの隣に座るロメロはクスっと微笑む。何故なら彼女の、女王陛下としての心の広さに………ホセ公爵やその先祖のクリス・ヨパーソン、そしてその盟友であるレオナルド・ミア・シュバルツが見たら大変、喜ばれるだろうと………。
アナタの娘は目の前の困難や苦難に立ち向かい、そして王国の影から支配していた悪魔を、数々の修羅場を乗り超え、こんな立派な国王陛下に成長しましたよと。
「馬車の中では、賑やかにしているわね」
賑やかな会話を繰り広げる馬車を眺める。一方、馬車の外ではアンゼシカは馬に乗って走り、周囲を警戒している。自身は何故、馬に乗れるのかって?言っていなかったがそれは簡単、アンゼシカ・ヨハーソンに転生した時、彼女に備えていた馬術のスキルが受け継がれていたのだ。ちなみに王族専用馬車は5人用で、それ以上は乗れないのも理由だ。
「いじょーなーしっ」
上空では、飛竜に変身して飛行しているの小さな翼は、活発な声で異常無しを、アンゼシカに伝えるのである。
「ありがとう、小さな翼ちゃん」
アンゼシカは敬礼する。
───街道の周囲は、丘のように盛り上がった岸壁が広がり、誰が潜んでいるか分からないからだ。




