劇場版ストーリー1
辺りに広がるのは赤黒い炎のようなオーロラ。オーロラの向こうには白銀の鋭い瞳をギロリと光らせた異形。頭髪には金色のたてがみ。額には2本の角を伸ばし、体長は10メートル。全社には不気味な程の白い艶を光らせ、びくびくと脈を行き渡る球体形をした両肩に強靭な胸筋、そして細い腹筋。下半身には太ももにふくらはぎ、常に前屈みの体勢となっている。
異形は、赤黒い威圧感を発揮し、衝撃波を放つ。
───赤黒い衝撃波に、仲間達は何とか踏ん張って体勢を整え、吹き飛ばされそうになる仲間達。ミリアは後退していく仲間達を通り過ぎ、ミリアは両手を掲げ、詠唱する。
「クラウ・ソラス。我が手に現れよ」
ミリアの頭上に詠唱陣が描かれ、そこから聖剣クラウ・ソラスを召喚する。そしてミリアは聖剣クラウ・ソラスを掴み、数十メートル先に立ちはだかる異形に向かい、構える。
「何をやっている?ミリアっ」
「ミリアさん、早まってはいけませんっ」
「やめろミリアっ」
「そうです、あなたが今、何をやっているのか分かっているのですか?」
「ミリア、ダメ。こっちに、戻ってきて」
ミリアの行動に何かを察し、アレックスとデビッド、サウルにロメロ。あと、小さな翼は彼女を制止しようと訴え掛ける。
「ダメです、ミリアさんっ!!」
アンゼシカは手を差し伸べる。視線の先にいるミリアに。場所はとある国にあるとある地下神殿の中にだ。祭壇にて彼女は聖剣クラウ・ソラスを両手で掲げていた。
アンゼシカ・ヨハーソン。彼女はかつての姫君であるミリアを追放し、クロフォード王国の王位に就任後し、その権力を行使して民族支配政策と言う名の大量殺戮を引き起こした悪役令嬢だ。しかし、追放されたミリアとその仲間達が引き起こした反抗作戦により、王国は平和を取り戻した。そしてアンゼシカ・ヨハーソンの全ての罪状は免除された。免除の理由は歴代の国王陛下を、そして王国を昔から支配していた悪魔による仕業として処理された。全てを許されたアンゼシカ・ヨハーソンは時に国王代理、一方でミリアのサポート役として日々。最愛の恩人であるミリアとの日々はアンゼシカにとっては幸せで、充実した日常を送っていた。
「みなさん、ごめんなさい…………」
ミリアは後ろを振り向き、仲間達に向かってごめんなさいと言うばかりに、皆に微笑み掛ける。そして、赤黒いオーラを発揮している異形に立ち向かう姿勢を、仲間達に背中を見せつける。
「ミリア様っ」
地下神殿の中にて、アンゼシカ・ヨハーソンの声が響き渡るのである。




