EXストーリー28
───私は夢を見ていた。それは何より尊敬しているアンゼシカお姉様が乗る馬に跨がり、王都から少し離れた平原を風を切って駆け抜ける。そんな夢である。
「アンゼシカおねぇさまっ」
当時の私は12歳。風を切って走る馬のスピードに気分は高潮、アンゼシカと一緒にいることが何より嬉しいから。
「ミリア様、しっかり掴まって下さいね?」
アンゼシカは後ろ向きの体勢で、背中に掴まるミリアに言った。
「はい、お姉さま…………」と、ミリアは頬を赤くし、ぎゅっとアンゼシカの背中に手を回し、掴まる。ほんの少しでも力が弱ければ乗っている馬に振り落とされそうで、必死に掴まるのである。
ドキドキする気持ち、それは恋。異性と接しているような感覚に近い。
★★★★★★
アンゼシカと私は馬から降り、一緒に平原から大空を眺める。そして広がるのは蒼穹と言わんばかりの青い空、流れる雲。
そして、2人は同じタイミングで思わず仰向けの体勢で寝転んで両腕を広げ、互いに向かい合う。
「ふふふ、やはりミリア様はかわいいです」
アンゼシカは顔を赤くし、思わず手を伸ばし、ミリアの頬をスッと優しく撫でる。何故なら、見つめてくるミリアの表情が、愛おしい気持ちになるから。
「もう、アンゼシカお姉さまったら…………くすぐったいですっ」
ミリアは頬を赤くし、恥ずかしく何処か嬉しそうな表情で微笑む。そのミリアの笑顔にドキドキとするアンゼシカは思わず。
「ミリア様…………すいません、私はがまんできませんっ」
「ひゃっ!!アンゼシカお姉さまっ!!」
アンゼシカに抱きつかれ、ミリアはビックリ。その抱き締める力は強く、温かい。彼女の笑顔を見たら、抱き締めたくなったから。
そして1分、2分、3分…………アンゼシカはミリアを抱き締める。小さな身体から伝わる彼女の温もりが、ドキドキとした鼓動が、アンゼシカの心に優しく心地よく響かせていく。
するとアンゼシカはハッと我に返り、離れて起き上がる。
「ミリア様、申し訳ありませんっ」
アンゼシカは思わず土下座する。彼女はシュバルツ家王族、このような行為は不敬と見なし、場合によれば死罪に値する。
しかし、ミリアは何も気にしない様子で起き上がる。
「アンゼシカお姉様…………」
ポッと頬を赤し、視線を反す。
「私、アンゼシカ・ヨハーソン。ミリア様にご無礼を働き、どのような罰もお受けする覚悟はありますっ」
アンゼシカは地面に頭を擦り付け、言った。死罪は覚悟の上、ただの兵士が王姫を押し倒すのは言語道断。
(もう、お姉さま………)
ミリアは何処か残念な様子で頬を赤くするのである。




