後日談 おまけ30
部屋にて、おぼん板に置いたジュースとクッキーのおやつを持って入ってきたお母さんは頭の上に?マークを出現させている。そして腕を組み、壁とにらめっこする体勢でベッドに背中を向けて座り、それは暗雲を立ち込めた雷のような………ピリピリとした近寄りがたいオーラを放ち、うちの娘(真美)の姿がある。
───あららら?………いったい、何があったのだろう?………と、お母様はヒソヒソと絵葉に耳打ちし、尋ねる。
「絵葉ちゃん。真美に何かあったの?」
「それがお母さま………」
絵葉は説明………。包み隠さず正直に………彼女曰く、いつもやっている愛情表現であり、大好きなせんぱいへのスキンシップである。
(あらららら…………)
絵葉から聞かされた説明に、お母さまは後ろ姿の真美を見て苦笑いをして困惑する。ちょっと気持ちが分かるような気はするけど………。
絵葉は真美の後ろにスリスリと歩み寄り。
「せんぱい………」
絵葉は真美に言う。自身も少し、過度なスキンシップだと反省している。
(…………)
しかし、真美は背中を向けたまま沈黙する。いまだにベッドに座り、近寄りがたい雰囲気を放ち、まるで玄関先の置物のように動かない。
「この通り、ぜんぜん口を聞いてくれないのですお母さま………」
絵葉いわく、聞いてくれないタイムは1分。細かく言えば1分5秒だ………。
(みじかいわね………)
真美ママは差し入れを持った状態で困った笑みを漏らし、頬をポリポリと搔く。
「せんぱぁ~〜~い」
絵葉はいつものようなノリで尋ねるのである。しかし真美は沈黙、何故なら頬は恥ずかしい表情でポッと赤く染め、返す言葉が出て来ない。
「真美、許してあげなさい。アナタ、一つせんぱいなんだから………」
お母さんは言う。
一方の真美は、少し鼻で息をしただけ。
「せんぱい、クッキーですよ?チョコ、入ってますよ?」
絵葉は一枚のチョコクッキーを真美の真横に差し出す。
(チョコクッキーって、ちょっと私の好きなモノじゃない………)
チョコクッキーに心が揺れる真美。
そしてボリボリと………真美のま横では絵葉によるクッキーを食べる咀嚼の音。
1枚、2枚、3枚………絵葉はチョコクッキーを食べている。
「アンタね、少し食べ過ぎ………」
このままでは全部、大好きなチョコクッキーを食べられてしまう。と、思わず真美はクルッと振り向く。
(あらら………)
その光景に、真美ママは言葉を失った………。何故なら振り向き際に、真美と絵葉がくちびる同士で合わせあっていた。1秒、2秒………部屋の空気が凍りつくのである。




