後日談 おまけ19
その頃、マイキー公国の北部。マイキー公国とクロフォード王国の連合海軍が北の海域にて、公安任務を実施中である。
甲板に行き渡る波しぶき。船体を揺れる波、大空を飛び交うカモメの群れ。そしてその囀ずり………。
総員、大砲用意っ。
───海上にて、ブクブクと脇立つ泡。泡立は1ヵ所、2ヵ所のレベルではなく、十数ヵ所の泡立ちが発生していた。その予感を察するかのように艦長の号令が一斉に響き渡り、海上船にいる海兵隊はテキパキと大砲を用意。
ゴゥヲヲヲヲヲヲヲヲッ!!
それはまるで大空から地上を支配するかのような咆哮………波しぶきを発生させ、ブクブクと泡立つ地点から、海上に出現したのは体長が数十メートルを誇るクラーケン。その数は10体、その姿は人から見たらまず即答する。
少し違うのは、体の色が赤。南寄りの海域、温かい海質なのか、体質が赤くなったらしい。赤い体質はまるで凶暴性を表しているかのように。
「現れたなクラーケンッ!!」
先頭に立つクロフォード王国の海上船。甲板にはミリアがロングソードを抜き、クラーケンを睨み、戦闘体勢を整える。
───そして大砲の砲撃が一斉に放たれ、轟音が鳴り響く。砲撃がクラーケンに直撃し、空気中にセキ込むような爆煙が広がる。
ボヲヲヲヲヲヲヲヲッ!!
砲撃を浴びせられたクラーケン達は爆発したかのように激怒。海面から巨大な触手ゲソを伸ばし、海上船に叩きつけて破壊。それからバキバキと音を響かせて海中に引きづり込む。
海上に触手ゲソが伸び、海上に落ちた乗組員達を捕まえ、クラーケンがバクバクとおぞましい牙を覗かした大口の中へ次々に補食していく………。
その光景は、バキュバキュ………と、まるで粉砕されるかのような咀嚼の音。響き渡る断末魔の叫び声。海上を逃げ惑う乗組員。しかし、ミリアが乗る海上船は。
「私は簡単には死なないわっ」
ミリアはロングソードを片手で構え、詠唱。そして発動する。狙いは正面のクラーケンに。
グヲヲヲヲヲヲヲヲッ!!
───クラーケンはおぞましい無数の牙を生やした大口を開き、地鳴りのような咆哮を響かせる。触手ゲソを海上に一斉に出現させて狙いを定める。
「付与。氷よ、刃に宿せっ!!」
ミリアはロングソードの刃に氷属性を宿らせる。空気中には氷の粒子が広がり、パキパキと氷属性を宿らせた刃身、そしてミリアは真摯な姿勢で駆ける。振り下ろされる巨大な触手ゲソに狙いを定め、振るうのである。
(私は負けない………マスク・ド・a様の助けを借りなくても………)
ミリアはそう決意する。今までマスク・ド・a様や仲間達に助けられてばかりで、ダメだからだ。




