第388話 そこは彼女が望んだ世界part7
「クソっ、何て強さだ………」
麦畑にて。アンゼシカ・ヨハーソンは異形の騎士と刃を交えていた。奴から漂わせる邪悪な威圧感により、麦畑からは赤黒い粒子が火の粉のように空気中に充満し、一帯を震わせる。
互いに間合いを整え、戦闘体勢。ピリピリと………綱渡りのような緊張感を張りつめ、アンゼシカは冷や汗を滴らせて相手を視界に固定させる。歴戦の実力の彼女ですら分かる………此奴は強いと。
───異形の騎士は大剣を片手で構え、クシャ………クシャ………と容赦なく麦を踏み、アンゼシカに攻勢を仕掛ける。
アンゼシカは奴の足音を鳴らすと同時だった………。
「ミリア様には指一本も触れさせないっ!!」
アンゼシカは戦いの雄叫びを響かせ、そして大聖剣を片手で担ぎ上げて構えて駆ける。
互いに譲れない姿勢で刃を交え合う。火花を散らし、お互いの距離から得物を振るい、ぶつけ合う。
───アンゼシカは下がり、大聖剣を片手で担いで距離を整える。相手の姿を視界に固定させ。
「神聖な麦畑を貴様は………許さぬっ」
アンゼシカは大聖剣を片手で構えてダッシュ。
異形の騎士はアンゼシカの振り下ろしの一撃を、身体を横に反らして回避。そしてアンゼシカによる振り上げの一撃、横斬りの一振り。などを高速技を身体を反らして回避する。
距離を一瞬にして整える。常に沈黙、不気味な威圧感を漂わせた異形の騎士は大剣を振るい。
「ちょこまかと………」
アンゼシカは大聖剣を掲げ、ガード。しかし剣圧に負け、数メートル後退。
★★★★★★
その頃、茂みからミリアは戦いの様子を見守る。
(お姉様………)
アンゼシカを思うミリア。彼女は敵と一進一退の激闘を繰り広げている。自身が参戦することは許されない、そんな状況のように………。
しかし、気になる事がある。あの異形の騎士に何処か違和感、それはお姉様と一緒の戦闘スタイルから来ているからか?………。
(何だろう?………この気持ちは………)
ミリアはギュッと胸を押さえ、息を上下させる。アンゼシカお姉様、優しい父上と母上。繁栄する国、そして私を心から支持してくれている国民達。全てが理想的かつ自身が(望む世界)のように………。
毎日が大変で充実している。けど何かが違う………。
ミリアは思うのである。霞がかり、頭の中で映し出される記憶、それは仲間達と過ごした日々だった………舞踏マスクを着用した騎士、赤髪の戦士に緑髪の魔導師、茶髪の盗賊に黒髪の執事に桃色の少女。
ミリアっ………。
そして自身を呼ぶ声が………。
(私は…………)
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