第377話 映し出される光景part3
アンゼシカ(真美)が歩いていると、光に包まれた景色から赤黒い光が広がった景色に変貌した。次の光景が映し出される………。無数の赤黒い光の玉が全体に浮遊し、まるで怒りに満ちた人々の霊魂のように………。
───陛下、クリス殿が逃亡を致しました。このまま追跡をしますか?
光景が映し出され、それはミリアの過去ではなく、大昔の王国の話だ。隠密役と思われる黒装束の兵士は謁見の間にて膝を付き、当時の国王陛下レオナルドに尋ねる。
そうか、放っておけ。
ですが陛下。
彼は王国を………あのカイトと共に謀反を企もうとした反逆者だからだ。しかし逃亡隠密役の兵士の意見に、レオナルドは表情を険しく歪ませ。
放っておけと言っている。これは命令だ、ただ今より持ってクリス・ヨハーソンは追放処分とする。後は追うな………。
レオナルド陛下は隠密役の兵士に命令した。納得出来ない様子で隠密役の兵士は(承知しました)と一言を残し、謁見の間から立ち去る。
隠密役の兵士が立ち去り、レオナルドは玉座に腰掛け、落ち着いたようにタメ息。そして思い出す、あれは1年間前、建国した時だった。場所は出来たばかりの謁見の間。
そこにいるのはレオナルド、そして親友であり、共に戦火を駆け抜けたクリス・ヨハーソン。
呼び出しって何だ?もうすぐお前の戴冠式だってのに………。
レオナルドは口を開く。
クリス、お前に頼みがある。
頼みだと?
レオナルドは自身の胸をギュッと掴み、重い言葉を投げかける。
もし、我がおかしくなったら………城から逃げて欲しい。そして我を………。
分かった。と、クリスはレオナルドの様子を察したかのように了解した。
(初めから知っていたのね?レオナルドさんは、自身がおかしくなっていくのが………)
アンゼシカ(真美)は納得した。彼の身体にはDiablosが封印され、そして時間が経過していく事に自我が変質していくのを感じたのだろう。
それから年月が経過していく………様々な政策で民族派の人間質を粛清し、そして晩年のレオナルド。寝入るベッドに上体を起こし、後悔する。
───何てことをしてしまったのだ………。
あれから数十年、理性を取り戻した時にはもう遅い。いや、理性を解放されたと言っても良い。両掌を眺め、自身の手がどれだけ血を染めてきたか。を震わせる。
晩年の中、聞こえてくる奴の声。
───貴様は用済みだ。我は、これからも………貴様の子孫やその関係者に憑依し、支配していく………。
晩年の中、レオナルドは語る。
理性が残っている時に逃して良かった………クリス、後は頼む。ワシの代わりに、奴を………。




