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第359話 母の言葉





 メルディは彷徨っていた。暗い、暗い道の中を………。何処に進めばよいのか、何処を見たらよいのか。それすら分からない………。


 メルディは両手を眺め、思い浮かべる。


(そうか………私はもう………)


 納得して前を進む。過去、メルディはどれほど多くの人間を殺して来たのだろうか………。初めは指で数えられたが、任務で活躍するにつれて分からなくなった。


───すると。


 イたい………痛い。助けてくれ。


 現れたのは王国軍の兵士(亡霊)。刃で斬られた事による戦傷、苦悶の表情を浮かべ、ズルズルとメルディに接近して手を伸ばす。


 メルディは後退。そして、辺りには。


 ヨくモ、俺達をコロシテくれたな?………。


 ジゴクに堕ちろ。貴様が天国にイケると?


 アレだけ多くの人間を殺してきて、ユルサナい………。


 分からなぬなら、我々がツレテ行く………地獄へな………。


 辺りには、王国軍の兵士(亡霊)が次々と出現してメルディに接近し、手を差し伸べる。


(そうだな………あれだけ人を殺せば、仕方ないな………)


 メルディは納得した。大義とは言え、数々の人間を葬ってきた。天国行きは都合はよい、そして報いは受けなくてはならない。


 さぁ、こっちだ………おいで、メルディ………。


(さよなら、皆………)


 王国軍の兵士(亡霊)に導かれ、前に進もうとするメルディ


───そっちに行ってはダメっ!!


 現れたのは赤髪の女性。死んだ母が姿を現し、メルディの手を掴む。


(おかあ………さん?)


 メルディは振り向く。


 アナタはまだ、そっちに行ってはダメよ。アナタにはまだ、やらなければならない事があるハズよ。


「母さん、私はもう………数々の人間を。だから私………」


 報いを受ける。と、覚悟をしていた………するとメルディの言葉に対し、パンッと乾いた音が響き渡る。


「母さん?」


 メルディはビンタされた頬を触り、声を吐き出した。


───アナタは、ここに来るのはまだ早い。それに、アナタには待っている人がいるのではなくて?


 母は言った。


(母さん?………)


 アナタは、帰らないといけない…………。生きなければいけない世界に、アナタの帰りを待ってくれている人達の為にアナタは。


「けど私は、数々の人達を………この手はもう、多く、血で濡れていて。それで私は………」


───それでも………アナタは戻らないといけない。アナタには未来がある、その未来の為に命を賭けるのが、一番の報いではなくて?


 母は言った。

 

「私の未来?」


───そうよ、アナタしか分からない未来がある。これから沢山の経験をして、新しい世界を築いていく。それがアナタにしかできない報いよ………。だから………アナタは生きて。


 そして、光に包まれ、メルディは母から離脱していく………。



 

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