第357話 肉腫のタマゴから………。
皆は駆け走る。ドクドクと脈動して排気管のような血管。天井や地面、肉壁といった至るヶ所には妊娠したように孕んだ肉腫のタマゴの数々………。地面と天井にはピクピクと活発する肉壁が行き渡る城内廊下。空気中には赤い瘴気が充満し、その光景はまるで魔族が住む魔界のよう………。
何だろう。この異様な気配は?………。と額からは冷や汗、身を刺すような寒気に皆は思うのである。(まるで誰かに見られているような………)そんな感覚だ。
グルルルルっ…………と、小さな翼は本能的に飛竜に変身。肌を逆立たて、口から炎を吐き出す。
すると、気配の正体が明らかに………。
───その時、至るヶ所に行き渡る肉腫がドクドクと胎動。
その不気味な光景に皆は立ち止まって眺める。
そして………肉腫のタマゴからパリパリと肉質な音を放ち、産まれてきたのは魔人。昆虫のような紫の甲殻が全身を光らせ、不気味な赤い瞳。頭部には2本の黒い触覚を生やした昆虫魔人。
何だコレは?………この壁や天井、地面に広がっているのは。
皆は不気味な予感を感じつつ戦闘体勢を整える。
さらに次から次へと………全体に行き渡る肉腫のタマゴからパキパキと音を不気味に響かせ、全身を養液で濡らして産まれて来た魔人は産声を響かせる。
(そうは通らせてくれないようだね………)
肚を括り、アンゼシカ(真美)は大聖剣を片手で担いで構えて周囲に集まるモンスター達を眺め、気持ちを整える。
「ここまで来たなら、最後まで付き合ってやるぜっ」
アレックスはモンスター達を眺め、挑む気持ちでロングソードを構える。
デビッドは杖を構え、ふと笑みを浮かべ………。
「同時に後戻りも出来ませんけどね………」
と、言ってみる。
「なら、突き進むしかないでしょうね。皆様でお互いを助け合いつつ撃破しながら行きましょう」
周囲にいる産まれてきた魔人モンスター達を眺める、ロメロは冷静な姿勢で両拳を構える。
するとサウルは。
「俺は丁度、この前に作った小型爆弾の威力を試してやるか」
バッグの中に手を入れてゴソゴソと探し、自身が作ったと見られる謎の爆弾を取り出す。そして不敵な笑みを浮かべ、軽々とした姿勢を整えてモンスター達を眺める。
───グルルルルルッ!!
飛竜状態の小さな翼は鋭い眼光を輝かせての咆哮を響かせ、炎を吐き出す。
産まれてきた魔人の種類、まずは全身が泥だらけの泥の魔人に触手を全身に行き渡る触手魔人、肉の塊により造形された肉塊の魔人。
あとは多すぎて分からない…………。そして皆はゾロゾロと集まる魔人達の中を撃破しつつ駆け走るのである。




