第349話 組織最後の戦い
何だこの感じは?………と、メルディとリーシャは異様な威圧感を感じて後退し、額からは冷や汗を滴らせる。張り詰めた氷のように冷たく、悪魔のように恐ろしい………そんな威圧感である。
嫌な威圧感を察してメルディは2本のショートソードを構えて戦闘体勢を整え、リーシャに向けて言葉を投げかける。
「リーシャ、戦闘準備よ。次は冷静にね」
「はい、メルディさん」
隣のリーシャはスッと尺棒を構え、先程とは打って変わって冷静な姿勢を整える。
───すると、オスマン大臣は全身から禍々しい瘴気を放ち、うめき声を吐き出す………。光に包まれ、パキパキと全身の筋肉が呼吸するような音を響かせて隆起する。容姿は獣のように………漆黒の体毛が広がる両腕、両手には白銀に輝かせる両爪。強靭な体躯には黒光りの鱗、赤い鋭い瞳に牙。そして頭部には角を生やす。
悪魔の力により変異したオスマンは重みで前屈みの体勢となって牙を晒し、黒い息を吐いて語り出す。
「これがDiablosの、伝説の悪魔の力か…………」
両手に生える爪をパキパキと握って動かして状態確認。誰にも負ける気はしない気持ち、人間では到底辿り着けない力だ………。
「コイツ、変身しやがった………」
リーシャは尺棒を構え、異様な姿に圧されて後退する。するとメルディはリーシャに向かって。
「怯むなっ!!立ちはだかるなら、撃破する。今までそうしてきただろっ!!」
しっかりしろ、今までこんな奴を相手にしてきたのだから。と、リーシャに一喝。そしてこれが最後の戦い、この状況を切り抜けられなければ自分達に明日はない。戦いで血を流すのは組織としてこれで最後、スアレスさんには新たな未来を、そして残った私達には次なる道を歩まなければならない………。
ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲッ!!
───変異したオスマンは咆哮を響かせ、牙を晒して突っ込む。2人に狙いを定めて両爪を振るう。
2人は横に跳んで回避。同時に体勢を立て直す。
「威力はあるが、スピードは遅いっ」
メルディはショートソードを構え、速いスピードで突っ込む。そして変異したオスマンの背中を狙って跳びかかって刃を振り下ろす。
───しかし。
変異したオスマンは振り向き、大爪を振るってメルディを弾き飛ばす。
「勘は鋭いみたいだな………」
弾き飛ばされたメルディはスッと着地し、体勢を整える。
リーシャは尺棒を振るい、詠唱。地面に詠唱陣を描き、白銀の獅子を召喚する。
「行けっ!!」
命令し、白銀の獅子がメルディの横を猛スピードで通過して変異したオスマンに喰らいかかる。




