第347話 過去の亡霊
────皆は結晶化したクリスタルの景色が広がる階段をダッシュして駆け登ってミリアのいる最上階を目指していた。キラキラとした景色、見ていたら心を奪われそうな気持ちになるが………悪魔が作り出した光景だから立ち止まってはいけない。
そのメンバーの中に………。
「お、珍しそうな宝石。頂きっ」
サウルはクリスタルが隆起している壁に手を伸ばし、果実のように実っている金色の輝きを放つ宝石を採取する…………そして皆と階段を登りながら………。
「これも頂きっ」
サウルは空中を浮遊する歯車や竜の爪、紫の水晶を手に取って採取する。アレだ、盗賊としての本能である。
───アイツ、絶対に身を滅ぼすな………と、アレックスは心配に眺める。
「これも………」
「ソイツは無理だろ?」
アレックスは呆れた様子を浮かべ、ツッコミの一言をサウルに投げかける。
「だってさ、こんなレア物なかなか無いしさ………」
サウルはブスッとした様子でフワフワと空中に浮遊しているデカい石版に手を取る。
───そして、皆は階段を駆け登る。
しばらく駆け登った先、辿り着いた場所は円型の舞踏場の広間だった………。そこにはある人物。いや、かつて実在していたであろう人物だ。
「よく、ここまで辿り着いた。褒めてあげよう………」
そう主張するのはギリアム公爵………の亡霊。ボサボサの黒髪、顔面には紋章のペイントを塗り、貧相にヘコんだ頬。漆黒に神官服を着用し、得物は宝剣。人間とは思えない異様な威圧感を漂わせている。
「何だコイツは?」
アレックスは言う。知らないのも無理はない………およそ250年前に悪魔崇拝の儀式を行い、悪魔Diablosを召喚した張本人である。しかし歴史に記されていない為、一般人は知らない。
「我を知らぬとは………愚かな物だ。この先は我が崇拝する神、Diablos様がおられる。立ち去るがいい………もし、Diablos様を崇めるのであれば、我が同胞に加えても良いぞ………」
ギリアムの亡霊はケラケラと嘲笑。
「何やら、マトモな奴ではなさそうだな?」
アレックスはロングソードを構える。
「ですね?アレックスさんよりは可愛くないです………」
デビッドは杖を構え、主張する。
「おい、ソイツはどうゆう意味だ?」
アレックスはデビッドに尋ねる。
「いやぁ~~〜そのままですよ………目の前にいる方は、アレックスさんより可愛くないと言ったのですよ」
こんな状況において、デビッドの変なセリフに困惑して額からは冷や汗を流すアレックス。
「こんな時に冗談か………呑気な者達だ。闇に葬ってやろう」
ギリアム公爵の亡霊は宝剣を構える。




