第343話 アレックス達、王都上空にて。
───その頃、上空ではアレックス達を乗せた飛竜とその群れは王都に向かって飛行し、接近していた。王都に到着するまでの距離は1500メートル。正面から激しくぶつかる風圧にアレックス達は振り落とされないように飛竜の背中に広がる鱗を掴み、足元を踏ん張らせて体勢を整え、険しい表情を浮かべながらも瞳を細め、視線を定める。
その先の王都の景色に、アレックスは思わず。
「何だアレはっ!!アレが王都なのか?」
アレックスは声を荒げ、驚愕する。上空の雲と化した赤い瘴気を吹き抜け、城下町の景色が行き渡る。しかし、その光景はあまりにも異常な世界である。建物全体は禍々しい紫色をした肉壁が広がり、ドクドクと脈動している。そして至るヶ所に不気味に歪んだ巨大な樹木が生えている。
「まるで、伝承に記された………悪魔が住む世界である魔界のような………」
デビッドは飛竜の背中に掴まり、異界を眺めて語る。
「しかし、なかなかイカす光景じゃねぇか?貴重な素材や宝、トレジャーハンターの血が騒ぐぜ」
「言ってる場合か?ミリアを助けに行くんだぞ?目的を忘れるな」
アレックスはサウルを注意する。
「分かってるって旦那、ミリアの救出ってな………」
サウルは言った。そんで隙あらば場に落ちている素材や宝を頂戴する。アレックス達が見えない所でね………。あんな怪しい場所で素材や宝を集めないのは、盗賊として失格だ。
ロメロは飛行中の飛竜の背中から城下町を眺め………。
「………どうやら、地上の方では交戦中ですね?」
ロメロは言う。地上では異界と化した城下町で戦うのは反民族支配主義の人々だ。異形なモンスター達と交戦し、行き死にを賭けている。
「ミリアさんはどうですか?」
隣のアンゼシカ(真美)は尋ねる。そしてロメロは交戦状態の城下町を軽く眺め、確かめる。
「いませんね。恐らく城の中に突入したのかと………」
「そうですか」
ロメロの答えに、アンゼシカ(真美)は納得。すると、アレックスは決意し、提案した。飛竜の背中上から皆を眺め、口を開く。
「なら目的地は決まりだな?」
皆に尋ねる。
アレックスの質問に対して皆は「ああっ」と返事する。そして隣で飛行している小さな翼に目的地を告げ、その後は父親の飛竜に耳打ちをして伝える。
───父親の飛竜は咆哮を響かせ、群れの飛竜に伝えるのである。そして、アレックス達を飛竜とその群れは城に向かう。
そして、城全体を包囲するかのように。浮遊しているのは飛行系モンスターだ。体長100メートルの巨大蝿や小型悪魔、大鎌を得物とした骸骨神官などなどである。




