第340話 スアレスの決意
───大槌の一撃が振り下ろされ、城門前に設置されている(封印球)の宝石はパリッとガラスが割れるよいな音を響かせて破壊され、地面に破片がゴロゴロと行き渡る。
そして城門の扉を張っていた魔導結界は解除され、同時に僅かに残っている死霊騎士は結界消滅と共に消滅した。
城門前にて、スアレスは幹部達に視線を向けて説明する。
「集まってくれて感謝する。ここからは別々の行動になる。ホセ公爵を救出するメンバーとアンゼシカ・ヨハーソンを討つメンバーだ。そして俺は城下町の制圧に専念する」
町中にはコチラと同じようにモンスターを発生させる仕掛けがあるからだ。
「自分はスアレス様に同行します。ホセ公爵の救出は2人で十分かと………」
ライアンは言った。
「俺もだ。町中にいる部下達は少なく、時間が経過したらジリ貧になるのは明白だ。ここは幹部が助っ人に駆け付けるのが良い」
ガレッドも言う。
───そして、残りは。
「じゃあ、城に入るのはお前達だな?」
スアレスは言った。とりあえず決まった、城に入るのはメルディとリーシャ、ミリアの3人である。
「はい、お任せ下さい」と、メルディは敬礼。彼女が敬礼したら続くようにリーシャも敬礼。するとスアレスは3人に向かって視線を向け、低い声で言葉を投げかける。
「お前達、必ず生きて帰って来い。そして前々から考えていた事だが、この戦いが終われば組織は解散する」
───スアレスの言葉に、幹部達は沈黙する。しかし、それは悲しい表情ではなく、何処か納得したかのような表情であり、ガレッドとライアン、メルディはうつ向いている。一方のリーシャはシクシクと涙を流し、空を仰いでいる。さらにスアレスは話し出す。
「戦いが終われば、もう血を流さなくてもいいようになる。これからは新しくなった王国で、民族や歴史、伝統を広めていく団体を立ち上げて活動して行こうと思う。長い間、この血塗られた戦いに尽力してくれてありがとう。皆はそれぞれの人生を………」
「ボスっ………」
「リーシャ、泣くんじゃないっ」
メルディも涙を流し、シクシク泣いているリーシャの肩を抱いて励ます。
「寂しくはなるだろう。俺について行くのも良し、それぞれの人生を送るのも良し。私から言うのもアレだが、辛いことや楽しいことが色々とあった………過ごしていく度に奪われた家族を思い出して、それが原動力だった………」
スアレスの言葉に幹部達は瞳を閉じて頷き、沈黙する。
「そして、お前達と一緒に過ごせて楽しかった。今まで本当にありがとう」
スアレスは皆に伝え、付いてきた仲間達に感謝する。




