第338話 城門前、スアレスとライアン、リーシャ
一方、クロフォード王国の城は伏魔殿により異形化していた。巨大化した禍々しい大樹触手が行き渡り、かつての城の姿とはかけ離れていた。城全体を囲む大樹触手のスキ間から赤黒い輝きを放ち、まるで活きているかのようにパキパキと脈動している。
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────そして、城門前の中央広場にて。一足先に駆けつけたのは3人の戦士だった。1人の戦士は面倒くさい状況にタメ息を吐き、低い声を出す。
「どうやら、そうは簡単には通してもらえないようだ………」
スアレスは大槌を片手で担ぎ、目の前の光景に険しい表情を浮かべる。共に戦場を駆け抜け、一緒にいるのは召喚使いのリーシャと魔導師のライアン。
3人の前に立ちはだかるのは、大鎌を得物とした体長3メートルの骸骨神官が2体。そして30体程の数を誇る死霊騎士。後、城門前には(封印球)の宝石が設置されて輝いている。この先は城の中、中にいるのはアンゼシカ・ヨハーソンがいる為か守護は厳重である。
着用している漆黒のローブを揺らし、ライアンは詠唱する体勢を整えて威圧を漂わせる。
「この程度、今まで潜って来た修羅場と比べたら可愛い方だっ」
そして詠唱陣を上空に描き、聖光の槍が4本を出現させて放つ。
聖光の槍が死霊騎士達に降り注ぎ、弱点属性の為、一撃で次々と消滅して一掃される。
───それと同時だった………。(封印球)の宝石が輝き、3頭牙狼獣が出現し、ビリビリと咆哮を響かせる。そして3頭の牙狼獣は俊足の速さでダッシュしてスアレスに喰らいかかる。
リーシャは尺杖を構えて詠唱。詠唱陣を描き、白銀の獅子を召喚。そして3頭牙狼獣の正面に向かってダッシュ。
「ボスに触れさせるかよっ」
リーシャは声を上げる。白銀の獅子は3頭牙狼獣と激しくぶつかり合う。互いに牙を晒し、噛みつき合い、爪撃を与え合う。
───すると、リーシャの正面から1体の骸骨神官が大鎌を構えて駆け走り、振り下ろす。整えたいが体勢が間に合わない。
「死んどけっ!!」
位置は骸骨神官の横から。駆けつけたスアレスは大槌を振るい、一撃を与える。一撃を喰らった骸骨神官は空中に粒子を発生させて消滅。
「ボス、ありがとうございますっ!!」
リーシャは頭を下げる。ボスに駆けつけてもらわなければ死んでいたからだ。スアレスは大槌を片手で担ぎ上げ、リーシャの頭を撫でる。
「馬鹿者、頭を下げるな。部下を助けるのがボスの役目だろ?」
スアレスは言った。撫でる大きな手は何処か優しく、故郷を滅ぼされて身寄りがないリーシャはその手と大きな背中を見て育ったのだ。




