第337話 ミリアとメルディ
───すると、死霊騎士の剣がボサっとするミリアの左側から振り下ろされようと。
「馬鹿野郎、死にたいのかっ!!」
まるで瞬間移動のようなスピード。ミリアの横に立って移動し、死霊騎士の剣をガードしたのはガレッド。そして得物のハルバートをグイっと腕力で押し込み、死霊騎士をグラッと体勢を崩して後退させる。その同時だった。
「とりあえず散っとけっ!!」
そう吐き捨て。ガレッドは相手の懐に入り込み、ハルバートを振るって斬り伏せる。
おいおい、これは………。
───すると、空気中に充満する赤い瘴気の中をかき分け、3人の周囲には複数体のトロール達と数十体の骸骨騎士が包囲していた。数では余裕な状況なのか、モンスター達は嘲笑するかのように足を止め、得物をカチャカチャと振り回し、3人を眺める。
ガレッドはハルバートを片手で担ぎ上げ、言葉を放つ。
「これは舐められたモンだ。有利な形勢だから足を止めているんだろうな………」
まったくキリがないね………と、メルディは2本のショートソードを上段構えでクロスし、さらに上体を低くして構える。そして周囲のモンスター達に目を配り、瞬間移動のようなスピードで駆ける。
「嵐の竜巻撃っ!!」
周囲のモンスター達に嵐のような斬撃を展開して一掃する。常人の感覚や目では見切る事は不可能、今までの敵は視界に入る前に斬り伏せられ、肉塊となる。
空中や肉壁、禍々しい樹木に切り刻まれたモンスターの肉片が広がる。
「へへへ、どんなもんよ?」
メルディは刃に付着した血肉を払い、一言。
───グサリ………と、メルディの背後から骸骨騎士の凶刃が刺さり。
さらに続くように………トロールのこん棒がメルディの頭上から振り下ろされ、グチャとした音が響き渡る。
「メルディ………」
その光景に思わずミリアが叫んだ時。
「心配無い」
言ったのはガレッド。
───その時である。雷撃のような一閃が展開し、空中に骸骨騎士の骨、トロールの肉片が広がる。
地面に落下した骸骨騎士の頭蓋骨、トロールの肉片をグシャと踏みつけ、彼女は額や髪に付着した血を拭い、タメ息を吐きつつ口を開く。
「勝手に殺すなって………アンタ、私の魔法を知っているでしょ?」
メルディは言った。
「そういえば………」
確か疑似人形と言う魔法である。図書館で戦った際、苦しめられたっけ。と、ミリアは嫌な記憶を思い出す。
「さて、走るぞ。付いてきなっ」
「はいっ」
ミリアはメルディの後を追い、走る。目的地は城だ。ホセ公爵を救出し、そしてアンゼシカ・ヨハーソンの討伐である。
「まったく………」と、ガレッドも笑い、後を追う。




