第326話 テロ組織のボス、スアレス
「戦争が………共和国との戦争が始まると、城に忍び込んだアナタの部下達から聞いています」
ミリアは言う。
「そうだ。俺達はその戦争を止めるのもそうだが、最大の目的は国家転覆だ………」
国家転覆………ボスの言葉にミリアは沈黙。するとボスは無理もない様子を分かったかのように口を開く。
「ま、そうなるわな。アンタが敬愛しているアンゼシカ・ヨハーソンに刃を向ける事になるんだからな………」
さらにボスの言葉に、ミリアはさらに沈黙してしまい、返せる言葉が見つからない。アンゼシカ・ヨハーソンの殺害、自分にとって受け入れられる内容ではない。彼女に追放された身だが、彼女との楽しい思い出が決心を邪魔させる。
ボスはさらに続ける………。
「その為にはアンタの協力が必要だ。城が陥落した後、女王陛下として国を導いて欲しい。それが俺達の願いだ………」
ボスの言葉が一方的に進む。
「私は………」
ミリアは、ボスから聞き入れた言葉に身体を震わせる。国家転覆、アンゼシカ・ヨハーソンの殺害。心が受け入れられない。するとボスは、キツイ言葉を出し過ぎたと思ってか、少し反省した姿勢で頭をポリポリと掻いて口を開く。
「キツイ言葉が続いてすまなかった………何せ仕事柄、つい神経質な発言をしてしまってな………。自己紹介がまだだったな?俺の名はスアレス、反民族支配主義のリーダーを努めている」
ボス改め、スアレスは自己紹介。見た目とは裏腹に気さくな姿勢だ。
ミリアは震えていた………。国家転覆と言う発言に、アンゼシカ・ヨハーソンの殺害に。それは自分の大切な人や故郷を破壊する事を意味する。
「ボス、さすがにキツイ言葉を言い過ぎでは………」
フィリーは言う。
「仕方ないのだ………戦争は2日後に共和国に進行開始すると宣言した。時間がないのだから………」
スアレスは髭を撫でながら主張する。これが現実であり、これから行う活動を柔らかい表現で伝えるのは限りなく無理だ。
「私は………」
ミリアは考える。自分は彼女に追放され、今は冒険者ギルドの人間として働いている。しかし、現女王陛下である彼女を撃破して女王陛下に返り咲くと言うシナリオ。それは祖先のホセ・ヨハーソンの親友であり初代クロフォード王国国王陛下のレオナルド・ミア・シュバルツに乗り移った悪魔Diablosを撃破する悲願のシナリオだ。
───自分にあるのだろうか、覚悟が………アンゼシカ・ヨハーソンを撃破し、そしてクロフォード王国の女王陛下として………。
「君に尋ねる。アンゼシカ・ヨハーソンに刃を向ける覚悟はあるか?」




