第324話 馬車の中、東に向かうミリア
───時間帯は昨夜。月明かりが登る夜空、外では肌寒い風が吹き付け、夜風でユラユラと揺れる茂みからは鈴虫のせせらぎや小鳥鳴き声が響き渡る。街にてテロ構成員やフィリーに説得され、半強制的に………いや同行せざるを得ない状況により連れていかれた。
何処に向かっているのか………3台の馬車が蹄の音を街道の土を鳴らし、駆け走る。
(…………)
ガタガタと揺れる馬車の中にてミリアは座らされ、沈黙していた。まず、馬車はどこを進んでいるか分からない。窓は黒いカーテンで閉められ、外の様子を見られないようになっている。
向かいの座席にはフィリーが座り、申し訳無さそうに口を開く。
「ごめんなさいミリアさん。いきなりこんな事になって………」
頭を下げ、謝罪するフィリー。
「良いんですよ、仕方ない事ですから………」
ミリアは言った。まるで相談内容に納得したかのように………。冷蔵庫のように冷ややかに、破裂寸前の風船のようにパンパンに張る緊張感。これに耐えられず、フィリーは緊張に煽られながら口を開く。
「その………飲み物を飲みますか?さっき出店で買ったレモネードなんですけど?」
フィリーは2本のレモネードを持ち、勧める。さっき謝肉祭の屋台にて買った飲み物である。温くなっているけど………。
───フィリーの言葉に、ミリアは沈黙。今の状況では、飲み物すら飲む気すらならない。ましては目の前にはテロ組織の関係者、ギルドの受付をしていて、冒険者達の個人情報や依頼内容の情報をテロ組織の人々に流していたのだから………。怒りとか、憎しみとか、何なんだろうこの感じ?。
「ハハハハハっ………そうですよね」
2本のレモネードを持ち、フィリーは苦笑い。気持ちは分かる、嘘をつかれたら誰でも怒るから………。
「この馬車は、どこに向かっているのですか?」
ミリアはカーテンで仕切られた窓を眺め、尋ねる。
「え~とですね。道は具体的には言えないのですけど、東に向かっています。そこに組織のアジトがあります」
「そうですか」
ミリアは冷たい声を一言。その一言にフィリーは。
(やっぱり、怒ってるよね………)
フィリーは緊張感。ギルドには突然の辞表を提出して、営業中の冒険者ギルドの酒場を、ミリアには休業だと伝えて嘘をついたり………ミリアだけでなく、怒ってる人達は沢山いるだろう。
───馬車は、東に向かって夜道を進む………。
着いた場所、とある岸壁にある洞窟神殿。王国と共和国の国境にある洞窟であるが、実際には共和国の領地。初めは領有権で問題なったが小さい領地である為、放置された。洞窟神殿は共和国の領地の為、王国は捜査出来ない。




