第320話 大会終了後、広場にて。
───そしてこれにて、中央広場で開催されたダンス大会は終了した。観客達は優勝者、もしくはダンス大会に参加した人達を暖かく讃え、拍手は最後まで鳴り響くのである。
本当の主役は優勝者に限らずダンス大会に参加した人達だ。大会を盛り上げ、最後にはドラマを見せて観客達を楽しませた。それはダンスが苦手なアルフレッドが今大会を優勝に辿り着いたという事だ………。
★★★★★★
───時刻は夕方頃。夕陽が大空を登り、紅に染め広がる。
場所は中央広場、かつて賑わいを見せたダンス大会の会場は明日の催し物開催のため、謝肉祭関係スタッフにより撤去作業。
ミリアはパチパチと拍手して。
「いや、本当におめでとうございます。アルフレッドさん」
ミリアは言った。
「そんな、自分は………」
頭をポリポリと掻いて照れるアルフレッド。今回はマグレ、運が良かっただけだと謙虚に受け応える。
「優勝だけでなく、今大会の技術賞まで頂いたので今回の優勝を受け止めるのが筋だと思いますよ」
と、デビッドは主張する。
「しかし、まだ自分がダンスのトップに達したなんて実感がなくて………」
するとリーシャはアルフレッドの背中を叩いて言葉を投げかける。
「しっかりしろ、変な謙遜なんてするな。今回の優勝はアンタの実力、受け入れられないのは参加者に失礼だろ?」
リーシャは強い言葉で言った。
「そうです、お兄様はやれば出来る方なのです。ダンスだけでなく貴族として生きていたら色々と困難は立ちはだかります。謙虚にしてても報われない事もありますし、欲深い者が報われる事もあります。今回は胸を張るべきですっ」
クリスティーナは言った。ちなみに腹痛は治っており、お花摘みは行かなくてもよい。
「お前にはいつも一言ツッコミを入れられるな………そうだな、次はお前が大会に挑戦してみてはどうだ?俺がダンスを教えて上げても良いかな?」
アルフレッドは言った。そして指導を提案する。
しかし、クリスティーナはプイッと兄から背を向け、恥ずかしい表情で声を上げる。
「お兄様にダンスの指導なんて、恥ずかしくてイヤですわ………」
クリスティーナは言った。
「お前な………兄のダンスの実力を認めてくれたんじゃなかったのか?」
さっき言っていたことが違う………アルフレッドは困惑した様子で尋ねる。しかしクリスティーナはプクッと頬を膨らませ、ムキになる。
「嫌ですわ、お兄様から指導なんて………」
クリスティーナの様子に、皆は少し呆れつつも微笑ましい気持ちになる。恐らく兄妹というのが恥ずかしくなる年頃なのだろう。




