第292話 試練終了、そして答え
───戻って来られたようだな?
漆黒の空間に出現した光の裂け目から出て来たアンゼシカ(真美)に対し、光の球は声を響かせる。
(…………)
アンゼシカ(真美)は、あの世界で過ごした日々に浸り、沈黙していた。久しぶりの現実世界の日常に、このままいても悪くない気持ちになるが、それらを乗り越えた。しかし、いつまでも浸っている場合ではない。
───では、答えを聞かせてもらおうか?
光の球の声は尋ねる。
「私は………」
「せんぱい………」
「えっ?」
聞き覚えのある声に、アンゼシカ(真美)は思わずビックリした反応。
光の球の後ろから歩み寄って来たのは絵葉。
「どうしてアンタが?」
すると絵葉は………。
「実は私、この試練における使者の存在なのです。せんぱいがこの試練の中、もしあっちの世界で生きたいならせんぱいの気持ちを尊重し、今みたいに全てを思い出してこっちの世界に戻る選択肢を与えていたのです」
絵葉は説明した。
───ソナタに尋ねる、答えを聞こうか?
光の球の声は尋ねる………。
「うん」
真美は頷き、思い浮かべる。自分が試練の中で決意した人物達を………。
───そのとき、空中に浮かび上がるのは人物の幻影体。最初にアレックス、次にデビッド、その次にサウル、そのまた次にロメロ。そして最後………ミリアが浮かび上がる。
「うわぁ………」
アンゼシカ(真美)はその光景に、解放されたかのような安堵感。
「合格、おめでとうございます。せんぱい………」
絵葉はニコッと言った。
アンゼシカ(真美)は立ち尽くし、ポタポタと涙を流していた。
「せんぱい?………」
涙を片手で拭きつつ、アンゼシカ(真美)は言う。
「これが試練だって分かっているのに………試練だって分かっているのに、あの世界でアンタと過ごした日々が楽しくて、一緒に学校に登校して、一緒に昼御飯を屋上で食べて、一緒に下校して寄り道したり………こんな毎日がずっと続けば良いのに………と、思った私がいる………」
仮にも試練によって表現された世界、真美と絵葉の思い出が頭の中に行き渡る………。しかし、その世界は自身がかつて生きていた世界、友達を作らないと決心した私にあの子と出会い、(友情)というのを思い出し、そして何気ない日常というものが幸せであった。私はアンタと………。
絵葉はニコッとした表情を浮かべ………。
「せんぱい………私も、楽しかったです。試練の中、せんぱいと過ごした日々、私にとっては良い思い出です………」
彼女と別れたくない………そんな気持ちが涙となって現れ、流れ落ちる。
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