第282話 真の試練Part37
そして………学校帰りに真美と絵葉はアーケード街にて、寄り道をしていた。すると絵葉は前に立ち、私に向かって。
「さてせんぱい、大人しく寄り道をしましょうっ。」
いつもの絵葉。そして相変わらずハイテンションかつエキセントリック。
真美は冷静な姿勢で耳を挟む。
「とりあえず、私はアンタのブレーキ役よ。あまり変な所に行かないように………ね?」
「変な所なんて………せんぱい、何か先生みたいですぅ」
絵葉は、ジロジロと真美を眺める。真美は生真面目な言葉づかいで言う。
「アンタの言動なら、後輩を見守る先輩の立場として心配だからね………」
真美は説明した。まだこの前の事があるから………と、絵葉に向かってそのことを言おとしたが………。
「先に行きますよせんぱぁ~~~いっ」
絵葉は何処かにスタスタと歩いていく。
「て、コラ………人の話を最後まで聞きなさい、待ちなさい」
絵葉を追いかける私(真美)。そして私(真美)は思わず表情が緩んでしまう、この子がヒドい目に遭わなくて本当によかったと………。自分でも分からない、どうして私がここまで行動をしてしまったのだろう?本当は1人ぼっちな学生生活を卒業まで過ごす予定だったが、脱線してしまった………。変な奴に懐かれてしまったな。と、変に笑みを浮かべる私。
そしてアーケード街にある時計台の中央広場にて、絵葉は立ち止まる。
「せんぱい………」
「どうしたの?」
追いかける真美も立ち止まる。
───ありがとうございます………。
絵葉は純粋な笑顔で私に言った。その表情は誰にも囚われない無垢な笑顔、そして全ての苦しみから解放されて透き通るような笑顔だった。あの非道から救ってくれた真美にはいくら感謝しきれない、命の恩人である。
「どういたしまして………」
真美は絵葉の頭を撫でる。
「へへへへ………」
頭を撫でられてニヤニヤする絵葉。
(私はアンタにも、ある意味感謝しているけどね………)
真美は心の中で呟く。何故なら私自身、閉じこもっていた心の殻を打ち破り、連れ出して来れたのだから………。
そして今なら元友達の価値観が分かる気がした、学校を卒業したらかつて築いていた友人達とは離れ離れになり、関わりは無くなる。環境が変われば接し方も変化する、それはごく自然の事だから仕方ない。私は決心する………残りの学生生活、残された時間の中で後悔しないようにこの子と一緒に過ごす事にしよう。もしかしたら、この子も学校を卒業したら私の事は忘れてしまうだろう………しかし、私は彼女の高校生の頃の友人としての思い出として残り、彼女の血肉となって存在し続ける。
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