第26話 招かれざる来訪者
───その時、ピキッとした雰囲気が私の背筋に行き渡る。例えるなら冷水の一滴が背中をポツンと流される感覚だ。このゲームの悪役令嬢であるアンゼシカ・ヨハーソンに転生してから察知力が備えられ、どのモンスターがどこにいるか分かるようになっている。
平凡なOLとして生きていた現実では感じた事は無いけど、こんな感覚か………。
この感覚、まさか………。
アンゼシカ(真美)は思わず立ち上がり、辺りを眺める。気配を感じたのは放牧一帯。
「何だ、どうした?」
アレックスは尋ねる。
来る………。
私は大聖剣を抜き、気配を感じた方向へ走る。
★★★★★★
数分前………。
平和に日向ぼっこ、尻尾ぶんぶんと振り回す乳牛、羊達は愛らしい鳴き声。
───そのとき………1体・2体・3体・4体・5体………赤黒い炎の裂け目が空中に描かれる。
赤黒い炎の裂け目からは赤黒い炎のランスを片手装備した漆黒の聖職者が出現。漆黒の神官服、額には呪印札。
芝生一帯は赤黒い炎が燃え盛り、異変を察知した乳牛や羊達が怖じ気な鳴き声を響かせ、逃げ惑う。
そして1体の漆黒の聖職者はランスを振り回し、逃げ遅れる仔牛に襲いかかる。
────ッ!!
駆けつけたアンゼシカ(真美)は大聖剣を片手で振るい、1体の漆黒の聖職者を斬り伏せる。
芝生一帯には大勢の漆黒の聖職者が出現し、災厄の光景。穏やかだった農場が戦慄と化した。
「アンタ達、この前の………」
アンゼシカ(真美)は漆黒の聖職者達を睨む。穏やかだった光景を破壊され、怒りを隠せない。
「マスク・ド・a様っ」
ミリアは逃げ惑う家畜達を潜り抜け、駆けつける。そしてショートソードを構え、戦闘体勢。
「おいおいコイツは………」
駆けつけたアレックスは災厄にあ然。
「アレックスさん、アナタは牛さんと羊さんの避難誘導をお願いしますっ」
ミリアは一言。
「分かった、頼んだっ」
アレックスは離脱。
パニックになった乳牛、羊達を牛舎に避難誘導しなければ牧場の外に出てしまい、捜索しなければならない。効率よく避難誘導出来るのはアレックスだけだ。
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