第243話 運命の試練
───そこは漆黒の世界が広がり、視界には何も映らない………。暑くもなく、寒くもない。音すら存在しない世界であり、長時間滞在していたら精神が崩壊してしまう。人間、孤独を好む者はいるが、ずっと耐えるのは限界がある。
その漆黒の世界の中を、アンゼシカ・ヨハーソンの姿をした山瀬真美は歩いていた。
(やっぱり、私が受ける事になっているようね………)
真美は確信する。そう………今から行うのは(光の玉の試練)だ。魔法図書館にてレオナルド・ミア・シュバルツによって行われる試練である。この試練にて(自身が望む大切な人を選択せよ。)と尋ねられ、選択したキャラクターによって物語のEDが決まる。
───ここで、物語のEDが決まる………。真美の歩く足取りに、背筋が凍るような緊張感が行き渡り、果たしてどのような選択肢が表示されるのだろうか………。
アレックスを選択しての農業、畜産業が盛んな王国になるEDか………。
または、デビッドを選択肢しての魔法学が盛んな国家になるEDになるか………。
もしくはサウルを選択して、外国との貿易産業により革新的な王国となって繁栄を築いていくEDになるか………。
最後はロメロを選択して、ミリアが女王陛下に復帰し、民族、宗教の尊重や国内のあらゆる政策や外交を実施し、安定した従来の王国となるEDになるか………。
───そして隠し選択肢であるアンゼシカ・ヨハーソンを選択してのED。この条件が物語における本編EDであり、発生する条件は主人公のミリアが物語の中で悪役令嬢であるアンゼシカ・ヨハーソンに対する思いを伝え、好感度を上げる事だ。そうすれば最後の戦いにて、(光の玉)によりDiablosの支配が解除されて正気に戻ったアンゼシカ、そして仲間達と一緒にDiablosを倒し、その後は彼女が女王陛下に継続し、ミリアは仲間達と共に世界を旅するEDを迎える。
真美は望みを思い浮かべる………。
私はミリアを助けたい。本来は私がラスボスであり、城を抜け出した事により設定が変更され、彼女がDiablosに取り憑かれ、苦しんでいる。
(それにちょっと可愛いし………)
真美はポッと頬を赤くし、そう思い浮かべる。初めはエキセントリックかつ、チートじみた察知力でどれだけ隠れても発見されて、作中では設定されていないミリアの溺愛行動にビックリしたけど、慣れてくると何処か愛おしくなって来た私がいる。ここにもし彼女がいたら抱きついて来ただろう。
───さて、試練だ………。




