第241話 ホセの苦悩
(ハハハハ………見事にクーデターが成功し、娘が悪魔に取り憑かれた独裁者か………)
牢屋のベッドに寝転び、娘の策略の成功に情けなく笑い、ホセは頭を抱える。自身は猛反対したが、娘はどうしても行くと聞かない。それで押し切られ、娘を見送るしかなかった………。
情けない話だ………。本来は娘を守るのが父の役目、しかし娘に世界の命運を預けるなんて………。
「こんな父を許してくれアンゼシカよ………」
自身の情けなさに涙を流すホセ。
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───それからだったな………少しでも可能性を上げようと、私は反民族支配主義として活動している組織と合流し、娘には極秘にして取引をした。
組織には資金提供、そして民族、宗教派の国民を国外逃亡のほう助。資金難に苦しむ組織は大変に感謝され、さらには私に極秘に賛成し、王国に反対する個人、団体や貴族などが次々と協力を表明した。
(世の中、皮肉なものだな………)
ホセは思い浮かべる………。王国に対する反対が自身の支持率となり、当時の陛下を崩御後、娘が王国にクーデターを引き起こしての王座を侵略。さらには娘は悪魔に取り憑かれて独裁者となり、私が資金提供として協力している反対勢力を娘は知らないまま次々と粛清。
───こうして、娘に侵略された王国軍、父が協力している反民族支配主義による紛争の構図が出来上がる。
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(さらには追放されたのが、かつて極秘にヨハーソン邸に訪れた女王陛下の娘のミリア。そして追放されたあの娘が身分を変え、身分を変えてだが我が屋敷に再び訪れた………)
世の中、皮肉で世界は成りたっている。ホセはそう思い浮かべる………。
───そして、さらにホセはある賭けに出た。
反民族支配主義の勢力を引き上げる為、自身が王国軍にこれまで協力していた資金提供を話しての自首。
ホセは看守に提供された新聞を広げ、眺める。新聞には次々と王国中の団体、貴族がホセ公爵の解放を訴えるデモが発生し、聞き入れない王族に対する物資の提供を停止する経済制裁にまで発展し、反対勢力はさらに力を増す。
自身の支持力が王国中を巻き込む事態となり、それと同時に自身はここまで慕われていたと知るのである。
(ある意味、これが正しい結果なのだろう………)
ホセはタメ息。自身には先祖のクリスのような武力はないが、一番の武器は支持率。これまで王国に対する反対運動を実施する団体に資金提供し、さらには厳しい立場である民族、宗教派の民間人の国外逃亡を手助けをした事により多くの貴族や団体、個人に評価され、極秘ながら反王国思想は広がるのである………。




