第234話 言い争い、そして対抗準備
「最悪な事態になったな………」
ガレッドは冷静な様子で腕を組む。ホセ・ヨハーソン公爵は民族派に協力関係が深い貴族である。それが逮捕されたとなると、こちらにとってはかなりの痛手である。
絶望的な雰囲気、ライアンは口を開く………。
「迂闊だった、我がもっと目を配っていればこんな事には………」
ライアンは片手で頭を抱え、自身の責任のように悔やむ。
「誰のせいでもない、王国軍の力が日に日に増しており、諜報工作も力が増していた。それにこれまでも協力していた者達もこのような最期も覚悟していた、気に病む事は………」
「気にするなって言うのかッ!!この状況を貴様はこれまで命を落とした者達をそうやって扱っていたのかッ!!」
励ますつもりで言ったガレッドの言葉に、気に障ったライアンは激怒し、食って掛かる。
「やめなよ、2人共………」
リーシャは引き止める。しかしリーシャの引き止めの言葉も聞かず、ガレッドとライアンの言い争いはさらにヒートアップ。
「そんな事は思ってない、俺だってなるべく犠牲を出さずに俺なりに考えていてな………」
ガレッドは返すのである………。
「犠牲を出さずに考えているだと?これまで数々の戦いに、何十、何百人の犠牲が出ているんだぞッ!!戦士や民間人、協力していた貴族を含めてだっ!!これを考えていると言えるのかっ!!」
さらに激怒するライアン。
「何だと………」
デビッドは睨み、ライアンの胸ぐらを掴む。
───すると2人のケンカに、メルディは呆れた様子で駆け寄り………。
「止めろっ!!。こんな場所で言い争いをしても仕方ないだろう?」
メルディは仲介し、止める。
すまない………と、冷静になる2人。
「幸い、ホセ公侯爵が処刑される日時、戦争をする日時は決まっていない。救出する時間はあるはずだ」
「助けるって、正気かよ………」と、ガレッド。
「これを機会にする………。ホセ公侯爵を救出し、さらに戦争を止める為に王都に乗り込み、アンゼシカ・ヨハーソンを倒す」
ライアンは言った。
「ハハハ、イカれている犬死は確定だな………」
ガレッドは笑う。笑えないが………。
「イカれている作戦を今までこなしてきた。今更ではない、覚悟を決めるしかない………」
ライアンは部下達を含めて全員を眺め、言うのである。
「私は決まっている、この命は惜しくはない」
メルディは言った。
「私も同じく、覚悟は決まっているよ………」と、リーシャも言った。
1週間後、中央都市アフタヌーンでは創設250年記念の謝肉祭。戦争が始まるのに、カーニバルは皮肉でしかない。




