第229話 ミリアとメルディ
───〈ミリアの部屋〉───
「ハァ………ハァ………ハァ………」
ここはどこだろう………。メルディが薄っすらと目が覚めた場所はとある部屋にあるベッド。そうか、あの戦いの中、自分は龍属性の毒に感染した事により倒れたらしい。それで自分はあの時の記憶が蘇り、夢を見ていた………。
「あ、目を覚ましたんですか?」
ベッドの隣にはミリアが椅子に座り、看病していた。
「貴様っ………」
メルディは凄む。何故なら彼女にとってミリアは敵だからだ。ショートソードを抜こうとするが、無い。辺りをキョロキョロと探すが………。
「ダメですよ、ちゃんと寝ていなきゃ………」
ミリアは既にメルディの得物である2本のショートソードを取り上げており、注意する。
「クソッ…………」
メルディはタメ息を吐き、観念する。とりあえず龍属性の毒は解毒してもらったようであり、全身に痛みは感じない。
───沈黙し、緊張感が行き渡る。
メルディは横向きの体勢を整え、背を向ける。得物である2本のショートソードを取り上げられている為、戦えない。
するとメルディは沈黙を破るように………背を向けた体勢で口を開く。
「何で私を助けた?」
「えっ?」
「私は王国に反対運動をしているテロリストだ。もし、今の状況なら私をここで始末出来る。もしくは王国軍に引き渡して処刑台に送る事が可能だ………私なら………」
メルディの言葉に、ミリアは思い浮かぶ………。父上による独裁政治、そして先祖であるレオナルド・ミア・シュバルツによる親友殺しと民族支配が記憶から蘇り………。
「だって、放っておけなかったんです」
「何だと?」
「説明しておきます。私は元は王族、ミリア・ミア・シュバルツです」
(……………)
ミリアの説明にメルディは驚かない。何故なら組織の情報により、知っている。
「理由は分からないですけど、追放されました」
ミリアは言った。具体的に説明したいが、まだ納得が出来る情報がない為、しない。
「そうなのか………それで、追放された姫様が、冒険者ギルドになったわけか?」
「はい。けど私はアナタを始末したり、王国に引き渡したりする気はありません。父や先祖がしてきた事を考えると、放っておく事は出来ないのです」
ミリアの言葉に、メルディは………。
「………ふ、戦士としては甘々だな。それで貴様は私をどうしたい?」
「私は………」
ミリアは言葉を詰まらせる。先祖が成し得なかった国を築いていきたい。それが彼女の理想だが、それが成し得る事が出来るか分からない。自分にはそれを主張する資格はあるのか………。




