第225話 地獄からの解放
───鉄格子の扉がガチャ………と開き、僅かな灯りが牢屋に行き渡る。
私は塞いでいる耳や目を解き、(やった、解放されるんだ………)と、表情を緩めるのである。しかし、現実は残酷だった。
来い、次はお前だっ!!
入って来た兵士に乱暴に引っ掴まれ、若い女性は悲痛の叫び声を上げ、無理矢理に連れて行かれるのである。
───そしてまた、屋内全体に断末魔の叫び声が響き渡る………。1人、2人の赤ちゃんの産声が響き渡り、私は耳を塞ぎ、気配を殺してブルブルと全身を震わせるのである。
次々と………私が閉じ込められている牢屋には女性達が次々と増えていく………。断末魔の叫び声が無くなり、その度に女性が牢屋から連れて行かれ、そして断末魔の叫び声と赤ちゃんの産声が響き渡る。牢屋全体は変な匂いが充満し、衛生環境もクソもない。そんな事が繰り返され、頭がおかしくなりそうだ。
お願い、来ないで………。
私は隅っこで耳を塞ぎ、気配を殺していた。朝も夜も関係ない、地獄はどこだと言われたらまさしくここである。
★★★★★★
───それから数ヶ月。奇跡的に私は連れて行かれる事はなく、ずっと牢屋にいた。
(…………)
相変わらず私は耳を塞ぎ、気持ちが崩壊しないよたいに保っていた。精神状態は高い場所で綱渡りしているような状態である。
目にはクマが残り、こんな所でマトモに寝られるワケがない。
そのときである………。
───牢屋全体、いや施設中に響き渡る爆発音。衝撃により天井からパラパラと粉塵が降り注ぐ。
何事だっ!!
王国軍の兵士達は地上に向かい、階段を駆け登っていく………。そして地上では怒号。戦闘中だろうか、刃を交える音が響き渡る。
牢屋中にいる他の人達は、ザワザワと動揺を隠せない。
(何?………外では一体?)
意識が朦朧状態、私はフラフラになりながら耳を傾ける。
───そのとき、牢屋の出入り口の扉がドンっと衝撃を響かせて蹴り入れられ、破壊される。そして入って来たのは王国軍ではない知らない兵士達。それぞれの衣装がバラバラであり、彼等は牢屋を眺め………。
「民間人を発見したッ!!」
兵士の1人は私が閉じ込められている牢屋を眺め、そう言った。
ガチャ………と、鉄格子の扉は開かれる。
「もう大丈夫だ。君達は自由だ………」
兵士は親切な言葉で次々と中にいる人達を解放していく………。中にいる人は泣きながら牢屋から出ていき、兵士達に先導される。
君達は自由だ………。そんな言葉が私は安心したのか………。
(…………)
一方の私………プツリと糸が切れたかのように意識は闇に落ちた。




