第224話 メルディの過去、それは地獄
その時だった………。
───それは今の状況をかき乱すかのように………。冷たい息吹が行き渡り、地面に描かれる禍々しい魔法陣。そこから次々と現れたのは複数体の漆黒の聖職者。
異様な威圧感を漂わせ、漆黒の聖職者達は次々と一方的に………民族派の構成員をせん滅していく。
───ッ!!
突然の状況に、民族派の構成員達は体勢を整える前もなく、断末魔の叫びが戦場に響き渡る………。
「これは一体?………」
突然の状況に、メルディは言葉を失うのである………。戦わなければ………しかし、全身に行き渡る龍属性の毒が行き渡り、灼熱した体温により視界がグラッとして倒れる。
おい、お前っ………。
───薄くなった意識の中、状況に対応している声。
どうなっているのか分からない………この状態では満足には対応が出来ない。私は(死)を覚悟する。
決して、悔いはない………と、メルディの意識は漆黒に吸い込まれる。
★★★★★★
当時、12歳の私は王国北西部にある地域で育った………。住んでいる所は辺境にある小さな町だった。私は小さな農家の育ちであり、朝は教会に出向いて女神キュベレイに対して1日の平和を祈りを捧げる。
裕福な家庭ではなかったが、優しい両親や町の人々がいて、毎日が幸せだった………。
───しかし、その平和は突然として崩壊した。
いつものように朝、両親と共に教会に祈りを捧げようと足を運んだ先………。
貴様たちを異端者として拘束するッ!!
礼拝堂に突然、乱暴に乗り込んできたのは王国軍の兵士達だった。小さい頃の私では何がなんだか分からなかった………。優しかった町の人々、両親、そして私は兵士達に頭や全身を取り押さえられ、馬車に乗せられて連行された。
★★★★★★
───私が連れて来られたのは、とある施設だった。
兵士達には学校だと説明されたが、実際に案内された場所は赤い灯りがチカチカと照らす仄暗い牢屋であり、他にも多くの人々もいた。鉄格子で造られた牢屋は隣には幾つもあり、同じように閉じ込められた人々が大勢いる。
しかし、そこで行われていたのは地獄そのものだった………。
───ッ!!
仄暗い牢屋中に響き渡るのは複数の女性達による断末魔の叫び声、そして何故か赤ちゃんの産声。
お父さん、お母さん………。
私は目や耳を塞ぎ、涙を流して恐怖を押し殺して自分を落ち着かせる。この場所で、何が行われているなんて、考えたくもなかった。
そして断末魔の叫び声が静まると、ガチャ………と、鉄格子の扉が開いた。




