第223話 撤退を勧めるアレックス
「くそ、油断したっ………」
カスった所を押さえるメルディ。しかし、グラッとし感覚が全身に行き渡り、足元がフラフラになる………。
これは………刃に毒を宿していたのか………。と、額からは汗を滴らすメルディ。
「悪いな、俺の剣には龍属性が宿っていてな………」
アレックスは言う。龍属性が宿っているのは、ミリアと初めて会った時、そこで戦っていた飛竜からボロボロと落とした鱗、尻尾を材料にして、鍛冶屋で刃に付与した。思い出せば懐かしい………。
時間が経過する度、焼けるような痛みが全身に行き渡り、体温が上昇していく………。メルディは苦しい表情を浮かべて息を吐き、ショートソードを構える。
───アレックスは冷静な瞳を光らせ、ロングソードを構える。そして口を開く………。
「今すぐ部下達と共にこの場から撤退するんだ………その状況で俺と戦っても、勝ち目はないぞ?」
アレックスは忠告する。しかし、メルディは………。
「アタシの命は組織に入った時点で決まっている………王国を変える為、そのためならこの命………」
メルディは覚悟の表情、撤退の二文字はない………。
ジリジリと、フラフラとした弱い足取りでショートソードを構えて前進する。
次の瞬間。
───グルルルルルルッ…………。
その時、大空から小さな翼がドスッ………と地面に降り立ち、砂煙を発揮させる。キラリとした竜牙を光らせ、表情を凄ませてアレックスの前に立ってメルディを威嚇。子供とはいえ、飛竜。2メートルの体長でも、人間にとっても大きい方だと捉える。
「飛竜を仲間にしているのか………」
メルディは驚愕する。
自身が懐いているアレックスに敵意を向けられ、怒りを露わにする小さな翼。それに対してアレックスは落ち着いた様子で………。
「止めろ小さな翼、どうどう………」
アレックスは小さな翼の頭を撫で、落ち着かせる。慣れた手付きで、何故なら牧場育ちで不機嫌になったり、暴れてケンカする家畜を落ち着かせる技術を、両親から教えてもらったからだ。
一方の小さな小さな翼はグルルル………と、声を吐いてリラックスする。そしてアレックスは再び口を開く。
「もう一度言う、今すぐ部下を連れて撤退するんだ………」
アレックスは言った。本当なら殺したくはないからであり、弱った者を殺害する趣味はない。
コイツは何を言っているんだ………と、メルディは表情を険しくさせ………。
(……………)
上昇する体温、関節痛が全身に行き渡るメルディは沈黙する………。体調不良により、思考が思いつかない。




