第207話 刺さった剣を引っこ抜くミリア
────ッ!!
ロメロの拳撃が顎に直撃しわ飛竜は脳が揺れ、ピヨピヨと脳震盪を引き起こす。そしてドスッ………と音を響かせ、地面に倒れ伏した。
これを(機)に、アレックスは声を響かせる。
「今だミリアッ!!」
「はいっ!!」
ミリアは倒れた飛竜に向かって走る。ゴツゴツとした身体によじ登り、古びた剣に手を掴む。剣は深く刺さっており、全身に無数の傷が広がっている。
そして力一杯、引っ張る………。
───グヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲッ!!
飛竜は激痛に悶え、雄叫びを響かせてジタバタと暴れる。
「頑張ってくださいッ!!もう少しだからッ!!」
ジタバタと暴れまわる飛竜に振り落とされないように、ミリアはしっかりと掴まりながら古びた剣を引っ張る。振り落とされたらアレックスが与えてくれた好機が水の泡だ。
───頑張れミリアッ!!
皆から応援。
(お願い、抜けて………)
ミリアは額から汗を流し、引っこ抜く両手に力を込める。そしてズブズブと引っこ抜けるような音を響かせ、そして………。
───ヲヲヲヲヲヲヲヲヲッ!!
古びた剣がスパッと引き抜かれ、飛竜は雄叫びを響かせ、倒れて気絶した………。一方のミリアは振り落とされ、地面にゴロゴロと転倒する。
「ハァ………ハァ………ハァ………」
ミリアは古びた剣を持ち、立ち上がる。全身が地面に叩きつけられ、痛い。しかし、飛竜を助けたからこの程度、平気だ。
「よくやったなミリア………」
アレックスは駆け寄り、手を差し伸べる。
「ありがとうございます」
ミリアはアレックスの手を掴み、立ち上がる。
───キュ〜〜〜、キュ〜〜〜………。
その時、倒れている飛竜にすり寄るのは子供飛竜。親が動かない為、心配な声を響かせる。
「あ、おい………」
飛竜の元に向かうミリアを制止しようとする。
ミリアは飛竜の安否を確かめ、そして子供飛竜に視線を向ける。
「心配しなくても、アナタのお母さんは大丈夫ですよ。いい子、いい子………」
キュ〜〜〜と頭を撫でるミリアに心地良く鳴き声を響かせる子供飛竜。一方の飛竜は疲れ果て、寝息を吐いて休息している………。
───キュ〜〜〜、キュ〜〜〜………。
母親を助けて貰い、子供飛竜は尻尾をパタパタと振り、ミリアに飛びついて頬をペロペロと舐める。
「こら、くすぐったいって………」
ミリアは安心した様子で子供飛竜の頭を撫でる。王国軍に追いやられ、母親の飛竜は巣と子供もを守る為に戦っていた。全身に傷、剣が刺さっているのは他の冒険者やモンスターによる物であろう。




