第206話 飛竜(ワイバーン)との戦い
「そーいえば、お前と初めて出会ったのはこんな状況だったよな?」
アレックスはロングソードを両手で構え、隣のミリアに尋ねる。
「そうでしたっけ?」
「おいっ?………」
アレックスは思わずツッコミを入れる。
「倒すのは厳しいですけど………撃退しましょう」
デビッドは杖を構え、覚悟を決める。飛竜を相手にして生きて帰って来た者はいない。上質な素材目当てで挑む者はいるが、大抵の者は捕食されたり炎の息吹を浴びて灰になる。
────ッ!!
飛竜は怒りを露わにし、咆哮。周囲全体をビリビリと行き渡らせる。依頼内容は、北部にて発生しているモンスターによる人的被害。聞いていたモンスターはリザードナイトやゴブリン、トロールだ、飛竜は聞いてない。
飛竜は猛進。皆に狙いを定め、左の翼爪を伸ばす。
「来ますっ」と、ロメロ。
────ッ!!
皆は咄嗟に跳んで回避。爪先には猛毒、当たればヤバいのはみんな知っている。
皆が回避して体勢を整える前、飛竜は全身をグルッと回し、尻尾を振るう。
────ッ!!
尻尾のなぎ払いにより、サウルとロメロ、デビッドは風圧で後退。しかしアレックスとミリアは尻尾に弾き飛ばされる。
グォヲヲヲヲヲヲヲヲヲッ!!
飛竜はビリビリと周囲を威圧するように咆哮。何処か苦しそうな様子。
アレ?………と、ミリアは見えた。飛竜の肩にキラリとした1本の(何か)が刺さっている。
「アレックスさん………アレを見て下さい」
ミリアは差す。
「何だ?」
「剣が刺さってます。もしかしてなんですけど、飛竜さんが怒っているのはアレが原因なんじゃないかと?」
ミリアは言う。
「もしかして、抜きに行くつもりか?アレを抜いて大人しくなる保証はどこにある?」
「無いです………けど、このまま戦っても勝ち目は少ないです。可能性に賭けてみましょう」
ミリアは言った。飛竜とマトモに戦っても勝率は少ない。かと言って逃げても飛竜の追跡能力によりすぐに追い詰められる。
「王国の姫らしくない提案だ。しかし悪くない、乗ってやるよ、お前の提案をよッ!!」
まずは飛竜を大人しくさせる必要がある………。今のレベルでは討伐は不可能、なら苦痛の種を取り除き、大人しくさせる。
「雷よッ!!」
デビッドは杖を構えて唱え、雷球を飛竜に狙いを定め、放つ。
───ッ!!
雷球の一撃で、飛竜は怯む。大したダメージではない為、すぐに体勢を立て直す。
「皆、目を閉じろッ!!」
サウルはバッグから、とある爆弾を取り出し、放つ。サウルの声に皆は耳、眼を塞ぐ。すると爆発し、閃光が発生。俗に閃光爆弾と言う。
飛竜は閃光により、ピヨピヨと混乱。
次の瞬間、ロメロは右拳を込め、飛竜の顎に向かって駆ける。
「顎砕き(ジョークラッシュ)ッ!!」
ロメロは右拳を飛竜の顎にスッと伸ばし、叩き込む。




