第198話 ヨハーソン家の歴史Part47
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少し前にカイトと別れ、ほろ酔い気分のクリスは辺りを眺めていた。街灯の明りがポツポツと行き渡る道。人気は少なく、視界に広がるのはボロい服を着た宿無しや酔っ払いの市民など様々であり、夜の町は治安は悪い。
今宵は満月、黄昏れながらクリスは思う。
(ジジイみたいか………ハハハ…………)
クリスは苦笑いを浮かべる。話の中、カイトに酔っぱらとジジイみたいかと言われたからだ。こう見えても気にしている。どうやら自分は酒を飲むと説教するタイプの人間らしい………まだ20代だっての………。
そして言葉が思い浮かぶ………。
───俺の言う事が聞けないのかッ!!。
クリスは両拳を握り締め、悔しい気持ちを込めるのである。レオナルド………これがお前が目的とした夢なのか………正義感に満ちたお前は何処に行った?
クリスは腕を組み、思い浮かぶ。
───何だお前達はっ!!
その時、クリスの耳に怒号が響き渡る。この声は………カイトだ。
何があったのか………と、クリスは思わず走った。路地裏に突入し、漆黒が行き渡る道を路地を駆ける。
そして視界に映るのは漆黒マント、クチバシ仮面を着用した工作員。数は4人、スラリとした曲剣を片手で構え、刃先から鮮血がポタポタと地面に滴り落ちる………。
「何者だ、貴様ッ!!」
クリスは思わずロングソードを抜き、構える。
クリスがロングソードを抜いた同時だった………。
「王国に反旗を謀る者は、処刑せよとの命令だッ!!」
───漆黒フードの工作員は漆黒マントを広げ、一斉に斬りかかる。そして曲剣を振るう。
「ふざけやがってッ!!」
刃を交わる音を響かせ、壁や地面に鮮血が行き渡る。クリスはロングソードを振るい、1人、2人と工作員に斬撃を与え、撃破。
「………退くぞ」
工作員達はクリスの実力に勝機は無いと判断し、暗闇に紛れ、撤退。
場は落ち着き、クリスはロングソードを鞘に納め、辺りを眺める。そしてそこに血塗れに倒れていたのは………。
「カイトッ!!」
クリスは駆け寄り、血塗れのカイトを抱き抱える。
カイトの全身は奴等らに斬られて出血し、地面に行き渡る。
いや、こんな事って………と、幻想体のミリアは光景に騒然し、頭を抱える。
───すると満月の夜に雨がポツポツと降り注ぎ、地面に行き渡る。
「何故だレオナルドッ!!お前は同胞殺しをするほど堕ちたのかッ!!民族、宗教、伝統を尊重し、かつてのお前はそんな奴ではなかった、共に戦場を駆け抜けた頃の、あの時のお前はどこにいったッ!!」
クリスは涙を流し、訴えるように叫んだ。




