第188話 ヨハーソン家の歴史Part36
(戻って来たか………)
レオナルドは軽くタメ息を吐いて我に返り、元の戦場に帰還した。辺りに漆黒が広がり、まるで異界のような光景だ。正直に言えば戻って来たくはなかったが………奴を倒さなければ世界は終わるからだ。
すると2人は、我に返ったレオナルドに視線を向いて………。
「どうした?」
「何か考え事ですか?」
隣のクリス、カイトは同時に尋ねる。クリスやカイトから見ていたら、レオナルドはただ沈黙して立ち尽くしていたとしか見れない。彼が違う空間に転移して、聖剣クラウ・ソラスを覚醒したなんて思わないだろう。
「クリス、カイト………」
レオナルドは2人を呼び止める。
それなら使わせてもらう事にしよう。とっておきの切り札を………。振り返る2人にレオナルドは再び口を開く。
「ここは俺に任せてくれないか?」
レオナルドは不敵な表情を浮かべ、天を突くように両手で聖剣を突き立てて皆に告げる。そしてレオナルドの心の中に、あの声が語りかける。
我の名を呼ぶといい………我の名は。
「クラウ・ソラスッ!!」
レオナルドは続けて彼の名を呼び叫ぶ。
───レオナルドと聖剣の意思が1つになり、共鳴して覚醒。刃身に聖なる輝きが放たれ、そして輝きは戦場全体に行き渡る。
何だ、この忌々しい輝きは………
聖なる輝きに、Diablosは嫌がる。
「レオナルド、お前………」
クリスは思わず驚き、声を漏らす。
「それは一体?」と、カイトは質問を………。
「説明はあとだ。今から反撃を開始する、付いてきてくれるか?」
聖剣クラウ・ソラスを構え、レオナルドは言った。
「何を今更?」
「愚問ですよ、レオナルドさんッ!!」
クリス、カイトの答えを聞くのは言うまでもない。
2人は戦闘体勢を整え、息を吹き返したかのように勇ましい瞳を輝かせる。
聖なる輝きか………弱点属性を宿らせるとはやってくれるな、人間よ………なら、我々が全身全霊を持ち、お主らの希望を全て打ち砕いてやろう。
Diablosはさらに上回るように漆黒のオーラを全身に漂わせ、戦場全体を漆黒に染めんとする。
Diablosの漆黒のオーラにより、戦場は異界へと変質した。地面から幾度に隆起するのは曲がりくねった(何か)の巨骨、カラフルかつ不気味に生え広がる禍々しい樹木。そして赤と黒が織り成す空。
この異界こそ、魔族が本来の住む世界であり………人間が存在することを否定したような世界だ。
クリス、カイトは変質した世界に驚きを隠せない………しかし、レオナルドは………。
「心配するな、俺に任せろ」
レオナルドは言った。




